恋人の嘘を疑ったら、しぐさより何をすべきか。問い詰めずに確かめる方法の研究

恋人の話に、どこか引っかかる。目をそらした気がする、返事が一瞬遅れた気がする。そう感じて、しぐさから本当のことを読み取ろうとする人は少なくありません。研究から言えるのは、しぐさを観察するより「話を広げてもらう聞き方」と「確かめられる話かどうか」を見るほうが、嘘と本当を分けやすいということです。そして、問い詰める会話そのものが関係を傷つけやすいことも、研究で示されています。
3行でわかる
- しぐさの手がかりは弱く当てにならない、とレビューは結論づけている。目線や手の動きで決めつけない。
- 話を広げてもらう・予想外の質問をする聞き方で、実験の正解率は56%から71%に上がった。確かめられる細部が多い話ほど本当である傾向もある。
- 責める側と黙る側に分かれる会話のパターンは、関係の満足度の低さと結びついていた。聞くのは「確かめる」ためで、「白状させる」ためではない。
01何が起きているのか(悩みの正体)
疑いが生まれると、人は相手のしぐさに答えを探しがちです。しかし、しぐさは嘘と本当をほとんど区別できず、疑いを強めるだけになりやすいのです。
一度「嘘かもしれない」と思うと、目をそらす、早口になる、鼻を触る、といった動きがすべて怪しく見えてきます。でも、こうした動きは緊張や疲れ、責められている気まずさでも起こります。
しぐさで嘘を見抜ける割合については、しぐさで嘘は見抜けるのかを検証した記事で詳しく整理しています。結論は、偶然より少し良い程度です。
この記事では一歩進めて、疑いを感じたとき、実際に何をすればいいのかを考えます。手がかりにするのは、警察などの事情聴取を対象にした「話の聞き方」の研究です。ただし、恋人は容疑者ではありません。研究の考え方を、関係を壊さない形に置き換えて使います。
02研究でわかっていること
嘘と本当の差は、しぐさより話の中身に出やすい。話を広げる聞き方、確かめられる細部、情報を出すタイミングの3つが研究で支持されています。
Vrij・Hartwig・Granhag(2019、レビュー)[1]
嘘と非言語行動の研究を整理し、これまでに見つかったしぐさの手がかりは「弱く、当てにならない」と結論づけた。行動に注目して嘘を見抜こうとする人の正確さは平凡だった。しぐさと嘘の関係についての思い込みは、正すのがとても難しいとも指摘している。
対象: 既存研究の総説 / 限界: 主に実験室や捜査場面の研究で、恋人どうしの日常会話を直接調べたものではない。
Vrij・Fisher・Blank(2017、メタ分析)[2]
「たくさん話してもらう」「予想外の質問をする」「考える負担をかける」という聞き方(認知的アプローチ)を調べた研究を統合した。従来の聞き方と直接比べた14件では、嘘と本当を合わせた正解率が56%から71%に上がった。
対象: 実験で嘘をつくよう指示された人の聞き取り / 限界: 実験室の結果。本気で隠したい嘘や、親しい相手との会話でも同じ差が出るかはわからない。
56% → 71%
話を広げる聞き方を使ったときの、嘘と本当を見分ける正解率の変化(従来の聞き方と直接比べた14件のメタ分析)[2]
Palenaら(2021、メタ分析)[3]
本当のことを話す人は、あとから確かめられる細部(誰と一緒だったか、どこで払ったか、など)を嘘をつく人より多く話していた(20件・1,532人)。一方、確かめようのない細部の量では、両者を区別できなかった。
対象: 実験参加者の供述 / 限界: 差は中程度より小さめで、著者自身も追試と現場での検証が必要としている。
Hartwigら(2005)[4]
手元の情報を聞き取りの最後に示した場合、最初に示した場合より、観察者が嘘と本当を正しく判断できた(61.7%対42.9%)。先に情報を出さないことで、嘘の話と事実の食い違いが表に出やすくなった。この考え方は「証拠の戦略的な使い方(SUE)」と呼ばれる。
対象: 模擬の容疑者58人と観察者116人 / 限界: 取り調べを模した実験で、恋人間の会話にそのまま当てはまるとは限らない。
Schrodtら(2014、メタ分析)[5]
一方が責めたり要求したりし、もう一方が黙ったり逃げたりする会話のパターン(要求と引きこもり)を調べた74件(14,255人)を統合した。このパターンは、関係の満足度の低さなど望ましくない結果と中程度に結びついていた(r=.36)。関係面の結果に限ると結びつきはさらに強かった(r=.42)。
対象: 主にカップル・夫婦 / 限界: 相関の研究なので、問い詰めることが関係を悪くするのか、関係が悪いから問い詰めるのかは区別できない。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
しぐさを見るのをやめ、話を広げてもらい、確かめられる話かを見て、知っていることは最後に伝えます。目的は白状させることではなく、落ち着いて事実を知ることです。
| やりがちなこと | 研究から考えた代わりの行動 |
|---|---|
| 目線やしぐさで嘘を判定する | 話の中身と事実を照らし合わせる[1] |
| 「本当なの?」と「はい・いいえ」で聞く | 「どんな感じだった?」と話を広げてもらう[2] |
| 知っていることをいきなり突きつける | 相手が話し終えてから、落ち着いて伝える[4] |
| 答えるまで責め続ける | 一度で決着をつけず、時間をおく[5] |
しぐさで判定するのをやめる
目をそらした、間があった、を「嘘の証拠」として数えないと決めます。答えるまでの間や早口も、研究では弱い手がかりの一つにすぎず、それだけで嘘とは言い切れませんでした。
所要 今この場で
責めない形で、話を広げてもらう
「昨日は誰と、どんな話をしたの?」のように、自由に話してもらえる聞き方にします。尋問口調にならないよう、自分も自分の一日を話すくらいの軽さで十分です。
所要 5〜10分の会話
「確かめられる話か」を静かに見る
話の細かさそのものではなく、一緒にいた人や場所など、確かめられる細部があるかに注目します。話が細かいかどうかだけで嘘と決める説は、研究ではむしろ逆の傾向でした。
所要 会話の中で
知っていることは、最後に率直に伝える
相手の話を聞き終えてから、「実はこう聞いて気になっていた」と自分の受け取ったことを伝えます。わなにかけるためではなく、食い違いを一緒に確かめるためです。新しく情報を集めるために相手を調べることはしません。
所要 1回の会話
04距離の取り方と相談先
聞いても話がかみ合わないときは、一度で決着をつけずに時間をおきます。お金の話が絡む嘘や、聞いただけで怒鳴られるときは、公的な窓口に相談できます。
- 一度で結論を出さない: 責める側と黙る側に分かれる会話は、関係の満足度の低さと結びついていました[5]。言い合いになりそうなら「今日はここまでにしよう」と区切ります。相手が黙り込んで会話にならない場合は、ストーンウォーリング(黙り込み)の記事も参考になります。
- 消費者ホットライン(188): 投資話や借金など、お金が絡む嘘が疑われるとき。近くの消費生活センターなどを案内してもらえます[6]。
- DV相談ナビ(#8008): 確かめようとしただけで怒鳴られる、脅される、行動を制限されるとき。近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります[7]。
嘘が一度わかったとき、関係を続けるかどうかは、すぐに決めなくてかまいません。浮気の繰り返しについては、一度浮気した人はまた浮気するのかを調べた研究も整理しています。この記事は特定の人を嘘つきと判定するためのものではありません。つらさが続くときは、信頼できる人や専門の窓口に相談してください。
05よくある質問
恋人の嘘を疑ったときに迷いやすい点を、確認できた研究の範囲で答えます。
恋人の嘘は、しぐさや目の動きで見抜けますか?
しぐさだけで見抜くのは難しいと考えられています。嘘と非言語行動の研究をまとめたレビューは、これまでに見つかったしぐさの手がかりは弱く当てにならず、行動に注目する人の見抜く力も平凡だと結論づけています。目をそらす、鼻を触るといった一つのしぐさで決めつけず、話の中身を確かめるほうが研究の結果と合っています。
嘘かどうか、どう聞けば確かめられますか?
「はい・いいえ」で終わる質問より、「どんな一日だった?」のように話を広げてもらう質問から始めます。14件の比較研究を含むメタ分析では、話を広げてもらう・予想外の質問をするといった聞き方で、正解率が56%から71%に上がっていました。ただし実験室での結果で、恋人どうしで試されたものではありません。
知っていることがあるなら、最初に突きつけたほうがいい?
研究の上では、先に突きつけないほうが確かめやすいとされています。模擬の取り調べ実験では、手元の情報を最後に示したほうが、最初に示したときより正しく判断できました(61.7%対42.9%)。ただし恋人は容疑者ではありません。わなにかけるのではなく、相手が話し終わってから自分の知っていることを落ち着いて伝える、という使い方にとどめます。
相手のスマホを見て確かめるのはありですか?
おすすめしません。こっそり見ることは、それ自体が相手との信頼を損ねる行動になりえます。スマホチェックについては別の記事で研究を整理しています。確かめたいことがあるなら、相手に直接たずねるほうが、関係を壊しにくい方法です。
出典
- Vrij A, Hartwig M, Granhag PA (2019). Reading Lies: Nonverbal Communication and Deception. Annual Review of Psychology, 70, 295-317. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010418-103135
- Vrij A, Fisher RP, Blank H (2017). A cognitive approach to lie detection: A meta-analysis. Legal and Criminological Psychology, 22(1), 1-21. https://doi.org/10.1111/lcrp.12088
- Palena N, Caso L, Vrij A, Nahari G (2021). The Verifiability Approach: A Meta-Analysis. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 10(1), 155-166. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2020.09.001
- Hartwig M, Granhag PA, Strömwall LA, Vrij A (2005). Detecting deception via strategic disclosure of evidence. Law and Human Behavior, 29(4), 469-484. https://doi.org/10.1007/s10979-005-5521-x
- Schrodt P, Witt PL, Shimkowski JR (2014). A Meta-Analytical Review of the Demand/Withdraw Pattern of Interaction and its Associations with Individual, Relational, and Communicative Outcomes. Communication Monographs, 81(1), 28-58. https://doi.org/10.1080/03637751.2013.813632
- 消費者庁. 消費者ホットライン(188). https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 内閣府男女共同参画局. DV相談ナビ(#8008). https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html


