相性と結婚

なぜ同じ喧嘩を何度もくり返すのか。「責める・黙って離れる」要求-回避パターンの研究

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閉じられた木のドア
Photo: Radomianin / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開されている研究論文をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。特定の人を診断するものではありません。出典は末尾にあります。

また同じことで喧嘩になった。こちらが言えば言うほど、相手は黙って部屋を出ていく。毎回同じ結末になるのは、どちらかの性格が悪いからとは限りません。研究では、「責める」と「離れる」が互いを呼び出し合う循環として説明されています。この記事では、くり返しが起きる仕組みと、そこから抜け出す手がかりを整理します。

3行でわかる

  1. 一方が変化を求めて責め、もう一方が話題を避けて離れる流れを「要求-回避」と呼ぶ。74件・14,255人分のメタ分析で、関係の満足度の低さなどと中程度に関連していた。
  2. 責める側・離れる側は、性別や性格で固定されているとは限らない。「その話題で、より変わってほしいと思っている側」が責める側になりやすい。
  3. 新婚夫婦の研究では、この組み合わせが結婚後27か月で強まっていた。一方、カップル療法のあとに離れる行動が減った報告もあり、循環は変えられる。

01何が起きているのか:責めるほど離れ、離れるほど責める

同じ喧嘩がくり返されるのは、話の中身より「求める→離れる→もっと求める→もっと離れる」という流れが固まっているためだと、研究では考えられています。

心理学では、一方が不満を伝えたり変化を求めたりし、もう一方が話題を変える・黙る・その場を離れるといった形で話し合いから引く流れを、要求-回避(デマンド・ウィズドロー)パターンと呼びます。

このパターンが厄介なのは、片方の行動がもう片方の次の行動を引き出す点です。研究者のあいだでは、次のような悪循環として説明されてきました[5]。

  1. 一方が不満を伝え、変わってほしいと求める。
  2. もう一方が話を避けたり、黙ったりする。
  3. 避けられた側は「伝わっていない」と感じ、さらに強く求める。
  4. 強く求められた側は、さらに守りに入って離れる。
  5. お互いが「自分は相手のひどい態度に反応しているだけ」と感じ、立場が二つに分かれていく。

つまり、責める人と黙る人がいるのではなく、二人のやり取りの型ができあがっている状態です。喧嘩の話題が変わっても同じ結末になるのは、この型が毎回くり返されるからだと考えられます。

なお、黙り込みそのものの意味はストーンウォーリングの記事、喧嘩の型と別れのリスクの関係は「喧嘩の型」の記事で詳しく扱っています。この記事では「なぜくり返すのか」に絞ります。

02研究でわかっていること

要求と回避は話し合いの中で連動して起き、役割は「どちらが変化を望んでいるか」で入れ替わります。放っておくと強まる傾向も報告されています。

74件要求-回避を調べた研究を統合したメタ分析の件数(参加者は合計14,255人)[1]

Schrodt・Witt・Shimkowski(2014)[1]

要求-回避と、関係・コミュニケーション・心身の状態との関連を74件の研究で統合したところ、全体で中程度の関連(相関 r=.360)があった。夫婦関係に深刻な悩みを抱える参加者を含む研究では r=.413、そうでない参加者の研究では r=.345 と、悩みが深いほど関連が強かった。妻が求め夫が離れる型(r=.380)と、夫が求め妻が離れる型(r=.392)で、関連の強さはほぼ同じだった。

対象: 74件の研究、合計14,255人 / 限界: 相関の統合で、要求-回避が不満の原因なのか結果なのかは区別できない。

Klinetob・Smith(1996)[2]

50組の夫婦に、「妻が夫に変えてほしいこと」と「夫が妻に変えてほしいこと」の2つを話し合ってもらった。妻の話題では妻が求め夫が離れ、夫の話題では夫が求め妻が離れていた。会話を時間の流れに沿って分析すると、求める行動と離れる行動は話し合いの中で連動して起きていた。

対象: 既婚の50組(観察と質問紙) / 限界: 実験室での短い話し合いで、家庭での喧嘩そのものではない。

Holley・Sturm・Levenson(2010)[3]

男女・男性同士・女性同士のカップル計63組(各21組)を観察した。要求-回避はどのカップルにも同じように見られ、「相手よりどれだけ変化を望んでいるか」の差が、誰が責め誰が離れるかをよく説明していた(説明率 R²=0.41)。性別による違いは見られなかった。

対象: 米国の若い同居・既婚カップル63組 / 限界: 白人が中心の比較的似た集団で、ほかの年代や文化への一般化には注意が必要。

Eldridge ら(2007)[4]

深刻な不和を抱えセラピーを求めた68組、中程度の不和の66組、不和のない48組を比べた。関係の問題を話し合う場面で要求-回避が多いほど、不和の度合いが強かった。誰が責め誰が離れるかの偏りは、話題を選んだのがどちらか、不和の度合い、結婚年数によって強さや向きが変わった。

対象: 米国の夫婦182組 / 限界: 一時点の比較で、不和が先か要求-回避が先かはわからない。

Ross ら(2019)研究2[5]

新婚夫婦431組の話し合いを、結婚後27か月まで4回観察した。夫と妻のどちらも、話し合いから離れる行動が時間とともに増えていた。妻が求め夫が離れる組み合わせも、この期間に強まっていた(β=.31)。著者らは、この組み合わせが結婚初期の数年で強まることを示した、知る限り初めての結果だとしている。

対象: 米国の低所得地域の新婚夫婦431組 / 限界: 夫が求め妻が離れる組み合わせは、統計的に意味のある変化を示さなかった。

Heavey・Christensen・Malamuth(1995)[6]

48組の夫婦の話し合いを観察し、2.5年後に満足度を再び測った。妻が選んだ話題で妻が求め夫が離れる流れがあると、その後の妻の関係満足度が下がることを安定して予測していた。

対象: 48組(2.5年後に回答したのは男女各36人) / 限界: 人数が少なく、追跡できなかった人がいる。

Baucom ら(2011)[7]

深刻な不和を抱える134組を、2種類の行動的カップル療法に無作為に割り振り、話し合いを観察した。療法の終了から2年後までに、否定的な言動と話し合いから離れる行動が減っていた。2種類のうち統合的行動カップル療法(IBCT)のほうが、改善を保ちやすかった。

対象: 米国の夫婦134組 / 限界: 問題解決の話し方そのものは変わらず、前向きな言動はむしろ減っていた。

くり返しの仕組み研究でわかったこと数字
二人の行動が連動する求める行動と離れる行動は、話し合いの流れの中で結びついて起きる50組 [2]
役割は話題で入れ替わる変化を強く望む側が責め、もう一方が離れる。性別では決まらないR²=0.41、63組 [3]
時間とともに固まる新婚期の27か月で、離れる行動と「妻が求め夫が離れる」組み合わせが強まったβ=.31、431組 [5]
悩みが深いほど強い不和の強い参加者の研究ほど、要求-回避と結果の関連が強いr=.413 と r=.345 [1]
変えることはできるカップル療法のあと2年間で、離れる行動が減った134組 [7]

03見抜くサインと、抜け出すための小さな一歩

見るべきは喧嘩の話題ではなく、「求める→離れる→もっと求める」の流れが毎回同じかどうかです。以下は研究から考えた工夫で、効果を直接確かめたものではありません。

  • 話題は違うのに、毎回「片方が言い続け、片方が黙る・出ていく」で終わる。
  • 責める側・離れる側が、いつも同じ人に決まっている。
  • 喧嘩のあと、二人とも「悪いのは相手の態度だ」と感じている。
1

「今回は誰の『変えてほしい』だったか」を書く

直近の喧嘩を3つ思い出し、それぞれ変化を望んでいたのはどちらかをメモする。役割が話題で入れ替わるなら、性格ではなく型の問題として見直せます。

所要 5分

2

求める側は「お願いを1つだけ」に絞る

過去の不満を並べず、今回変えてほしいことを1つ、具体的な行動で伝える。強く求めるほど相手が離れやすい循環を、入り口で弱めます。

所要 会話1回分

3

離れる側は「戻る時間」を言ってから離れる

「30分たったら続きを話したい」のように、離れる理由と戻る時間を一言で伝える。黙って去るより、相手がさらに強く求める必要を減らせます。

所要 1分

4

相手の「変えてほしい」を聞く回をつくる

ふだん離れる側の人が、自分が変えてほしいことを話す時間を別に設ける。研究では話題によって役割が入れ替わっていたため、一方だけが求め続ける偏りをならす手がかりになります。

所要 15分

04距離の取り方と相談先

二人で型を変えられないときは、カップルカウンセリングなど第三者の力を借りる方法があります。怖さを感じる場合は、関係を続ける努力より安全を優先してください。

  • 話し合いがいつも同じ結末になるなら、夫婦・カップル向けのカウンセリングを検討する。療法を受けた134組の研究では、終了後2年間で離れる行動が減っていました[7]。カウンセリングの効果全般は夫婦カウンセリングの研究の記事で整理しています。
  • くり返す喧嘩の話題そのものが「解決しない違い」なら、「解決しない問題」とのつきあい方の記事も参考になります。
  • 要求-回避は、どちらも対等に話せる関係の中での型です。怒鳴られる、人間関係やお金を制限される、黙ることで罰を与えられるなど、怖さを感じる場合は相性や話し方の問題ではなく、支配の可能性があります(モラハラの行動パターンの記事)。
身の安全や心理的な攻撃に不安があるときは、DV相談ナビ(#8008、お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります)[8]や、緊急でなくても相談できる警察相談専用電話(#9110)を利用できます。この記事は一般的な情報で、特定の人や関係を診断するものではありません。

05よくある質問

同じ喧嘩のくり返しについて、よくある疑問に確認できた研究の範囲で答えます。

同じことで何度も喧嘩になるのはなぜですか?

研究では、一方が変化を求めて責め、もう一方が話題を避けて離れる「要求-回避」の流れが、話し合いの中で互いに結びついて起きることが観察されています。離れられるとより強く求め、強く求められるとさらに離れるという循環として説明されており、どちらか一人の性格だけで起きているとは限りません。

責めるのは女性、黙るのは男性と決まっているのですか?

決まってはいません。50組の夫婦の研究では、夫が変えてほしい話題では夫が責め、妻が離れる側に回っていました。同性カップルを含む63組の研究でも、性別よりも「その話題でより変化を望んでいる側」が責める側になりやすいという結果でした。

要求-回避のパターンは、時間がたてば自然に消えますか?

自然に消えるとは言えません。新婚431組を27か月追った研究では、妻が求め夫が離れる組み合わせはむしろ強まっていました。一方、カップル療法を受けた134組の研究では、療法後の2年間で離れる行動が減っており、変えられないわけでもありません。

相手が黙って離れるのは、愛情がないからですか?

今回の出典は、離れる側の愛情の有無を調べたものではありません。研究では、離れる側になりやすいのは「その話題で変化を望む度合いが小さい側」でした。ただし、無視が罰や支配として使われ、怖さを感じる場合は別の問題として、DV相談ナビ(#8008)などに相談してください。

出典

  1. Schrodt, P., Witt, P. L., & Shimkowski, J. R. (2014). A meta-analytical review of the demand/withdraw pattern of interaction and its associations with individual, relational, and communicative outcomes. Communication Monographs, 81(1), 28-58. https://doi.org/10.1080/03637751.2013.813632
  2. Klinetob, N. A., & Smith, D. A. (1996). Demand-withdraw communication in marital interaction: Tests of interspousal contingency and gender role hypotheses. Journal of Marriage and the Family, 58(4), 945-. https://doi.org/10.2307/353982
  3. Holley, S. R., Sturm, V. E., & Levenson, R. W. (2010). Exploring the basis for gender differences in the demand-withdraw pattern. Journal of Homosexuality, 57, 666-684. https://doi.org/10.1080/00918361003712145
  4. Eldridge, K. A., Sevier, M., Jones, J., Atkins, D. C., & Christensen, A. (2007). Demand-withdraw communication in severely distressed, moderately distressed, and nondistressed couples: Rigidity and polarity during relationship and personal problem discussions. Journal of Family Psychology, 21(2), 218-226. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17605544/
  5. Ross, J. M., Karney, B. R., Nguyen, T. P., & Bradbury, T. N. (2019). Communication that is maladaptive for middle-class couples is adaptive for socioeconomically disadvantaged couples. Journal of Personality and Social Psychology, 116(4), 582-597. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10626985/
  6. Heavey, C. L., Christensen, A., & Malamuth, N. M. (1995). The longitudinal impact of demand and withdrawal during marital conflict. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 63(5), 797-801. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7593873/
  7. Baucom, K. J. W., Sevier, M., Eldridge, K. A., Doss, B. D., & Christensen, A. (2011). Observed communication in couples two years after integrative and traditional behavioral couple therapy: Outcome and link with five-year follow-up. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 79(5), 565-576. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3339273/
  8. 内閣府男女共同参画局「DV相談支援情報」. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html