喧嘩のあと不安になる人へ。関係が続くかを分ける「喧嘩の型」の研究

喧嘩のたびに、「この関係、大丈夫だろうか」と不安になっていませんか。喧嘩そのものが悪いわけではありません。研究では、喧嘩の回数よりも「しかた」が、関係が続くかどうかを大きく左右することがわかってきています。
3行でわかる
- 喧嘩の多さより、喧嘩の中でどんな行動が出るかが、その後の別れのリスクと関わっている。
- 373組を16年間追跡した研究では、夫の破壊的な行動があった夫婦は、そうでない夫婦の約4.3倍のハザード比で離婚に至っていた。
- 「求める側」と「引きこもる側」に分かれるパターンは、経済的な余裕がある夫婦では満足度を下げるが、余裕が少ない夫婦では、むしろ安定させる方向に働くこともある。
01何が起きているのか
喧嘩の後に感じる不安の多くは、喧嘩の回数ではなく、喧嘩の中で出てしまう「型」への違和感から来ている。
「喧嘩が多いから、この人とは長く続かないかもしれない」と考える人は少なくありません。しかし Gottman と Levenson(2002)[2]の研究では、結婚が続いた期間を分けたのは喧嘩の回数ではなく、感情の表し方の「型」でした。感情が激しく揺れ動くタイプと、感情をあまり出さない「中立的な」タイプという、2つの異なるパターンが見つかっています。
02研究でわかっていること
相手を責める、話し合いから去るといった行動が目立つ喧嘩の型は、のちの別れのリスクと関連していた。
Birditt ら(2010)[1]
373組の夫婦(746人)を、結婚1年目から16年目まで追跡調査。夫が「相手を責める・皮肉を言う」といった破壊的な行動を報告した夫婦は、そうでない夫婦に比べて離婚のリスクが約4.3倍(ハザード比4.28)高かった。一方、夫婦どちらも率直に意見を伝える建設的な行動を報告した夫婦は、離婚のリスクが約0.65倍と低かった。片方が建設的に話そうとし、もう片方が話し合いから去ってしまう組み合わせでは、離婚のリスクが高まっていた。
対象: 373組の夫婦(白人47%・黒人53%) / 限界: 自己申告によるデータで、記憶のゆがみが入る可能性がある。
Gottman と Levenson(2002)[2]
79組の夫婦を14年間追跡し、その間に離婚した21組を分析。感情が激しく揺れ動く「不安定な感情スタイル」の夫婦は比較的早い段階で離婚に至りやすく、感情をあまり表に出さない「中立的な感情スタイル」の夫婦は、離婚に至るまでの期間が長い傾向があった。
対象: 離婚した21組(元は79組の夫婦) / 限界: 離婚した少人数のグループの事後的な分析。
Papp, Kouros, Cummings(2009)[3]
116組の夫婦(結婚約13年)の1,284件の喧嘩を日記形式で記録。「片方が求め、片方が引きこもる」パターンは、夫が求めて妻が引きこもる場合も、妻が求めて夫が引きこもる場合も、どちらも否定的な感情や、解決に至らない喧嘩と関連していた。夫が求めて妻が引きこもるパターンは、妻の抑うつ症状とも関連していた。
対象: 116組の夫婦(白人90.5%) / 限界: 横断的な分析で、因果の方向は明確でない。
Ross ら(2018)[4]
経済的に余裕のある夫婦515組を分析すると、「妻が求め、夫が引きこもる」パターンが多いほど、18か月後の妻の満足度が大きく下がっていた(β=-1.21, p<.01)。一方、経済的に余裕が少ない夫婦では、同じパターンでも満足度が安定する方向に働いていた。新婚夫婦431組を対象にした別の分析でも、同様の傾向が確認された。
対象: 低所得夫婦515組+新婚431組 / 限界: 高齢夫婦・同性カップル・異人種間カップルは対象に含まれていない。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
「相手を責める」「話し合いから去る」が繰り返されるかどうかに注目すると、関係の状態が見えやすくなる。
喧嘩の「後」を振り返る
喧嘩の直後ではなく、落ち着いたときに「相手を責める言い方をしなかったか」「話し合いから逃げなかったか」を、自分にも相手にも問いかけてみましょう。
所要 5分
「求める・引きこもる」の役割に気づく
自分がいつも「もっと話して」と求める側か、それとも話し合いから離れたくなる側か、パターンに気づくだけでも、次の喧嘩での対応を変えやすくなります。
所要 5分
「率直に伝える」を一つだけ増やす
責めるのではなく、「私は〇〇と感じた」と自分の気持ちを率直に伝える一言を、次の話し合いで一つだけ試してみましょう。
所要 会話1回分
04距離の取り方と相談先
話し合いを重ねても「責める・去る」が変わらない場合は、第三者の力を借りることも選択肢になる。
- 話し合いの型を変えたい場合は、夫婦・カップルカウンセリングを利用する方法がある。
- 相手からの責め方が、人格を否定する言葉や、行動の制限に発展している場合は、喧嘩の型の改善だけでは対応が難しいことがある。
05よくある質問
喧嘩が多いカップルは、必ず別れますか?
今回の出典では、喧嘩の回数そのものより、喧嘩の中でどんな行動が出るか(責める、話し合いから去るなど)が、別れのリスクと関わっていました。喧嘩が多いことだけで、別れると決まるわけではありません。
「話し合いから去る」のは、いつも悪いことですか?
今回の出典では、経済的な余裕が少ない夫婦では、引きこもる行動が満足度を安定させる方向に働く場合もあると報告されています。状況によって意味合いが変わる可能性があります。
出典
- Birditt KS, Brown E, Orbuch TL, McIlvane JM (2010). Marital Conflict Behaviors and Implications for Divorce Over 16 Years. Journal of Marriage and Family, 72(5):1188-1204. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3777640/
- Gottman JM, Levenson RW (2002). A Two-Factor Model for Predicting When a Couple Will Divorce: Exploratory Analyses Using 14-Year Longitudinal Data. Family Process, 41(1):83-96. Europe PMC record (DOI 10.1111/j.1545-5300.2002.40102000083.x)
- Papp LM, Kouros CD, Cummings EM (2009). Demand-Withdraw Patterns in Marital Conflict in the Home. Personal Relationships, 16(2):285-300. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3218801/
- Ross JM, Karney BR, Nguyen TP, Bradbury TN (2019). Communication That Is Maladaptive for Middle-Class Couples Is Adaptive for Socioeconomically Disadvantaged Couples. Journal of Personality and Social Psychology, 116(4):582-597. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10626985