価値観が合わないとわかったら、別れるべきか。「解決しない問題」とのつきあい方の研究

お金の使い方、休日の過ごし方、将来の住まい。話すたびに同じところでぶつかり、「この人とは価値観が合わないのかもしれない」と感じることがあります。そう感じるのは、あなたの努力が足りないからではありません。研究では、違いがあるかどうかより、その違いをどう話し、どう受け止めるかが関係の質と関わっていました。
3行でわかる
- 同じテーマでくり返す喧嘩は研究で「くり返される口論」と呼ばれ、584人の調査では、責める・避ける話し方が多いほど関係の質が低い傾向がありました。
- 違いを「なくす」より「理解して受け止める」ことを重視したカップルカウンセリングでも、深刻な不和を抱えた夫婦の約半数が5年後に改善していました。
- 別れを考えている人の約半数は、続けたい理由と別れたい理由の両方を持っていました。迷いは自然なことで、判断は一人で急がなくて大丈夫です。
01何が起きているのか(「合わない」の正体)
「価値観が合わない」と感じる喧嘩の多くは、話し合っても片づかず、同じテーマでくり返し起きるタイプのものです。くり返すこと自体は、関係が終わっているしるしではありません。
恋人との喧嘩には、2種類あります。1つは、予定の決め方のように、一度話し合えば片づくものです。もう1つは、お金への考え方や人づきあいの量のように、性格や育ってきた環境から来ていて、何度話しても形を変えて戻ってくるものです。
後者を、コミュニケーション研究では「シリアル・アーギュメント(同じテーマでくり返される口論)」と呼びます。くり返すたびに「やっぱり相性が悪い」と結論を出したくなります。けれど研究が注目しているのは、くり返すかどうかよりも、その口論の中で何が起きているかです。
関連して、「運命の人なら衝突しないはず」と考えるほど、衝突を相性の証拠と受け取りやすいことも報告されています(「運命の人」を信じるほど関係がうまくいかなくなるのか)。
02研究でわかっていること
くり返す口論でも、歩み寄る話し方ができている人ほど関係の質が高い傾向がありました。違いを受け止めることを重視した支援でも、深刻な不和を抱えた夫婦の約半数が5年後に改善していました。
Vanderbilt・Solomon(2022年)[1]
交際中・結婚中の584人に、直近の「くり返される口論」についてオンラインで尋ねた。歩み寄って一緒に解決策を探す話し方が多い人ほど関係の質が高く、相手を責めて言い負かす話し方や、話題を避ける話し方が多い人ほど関係の質が低かった。この傾向は、「この口論はいつか解決できる」と感じている人ほどはっきりしていた。
対象: 584人(オンライン調査) / 限界: 1回の調査で関連を見たもので、話し方を変えれば関係がよくなるという因果までは示していない。
Christensenら(2010年)[2]
長く深刻な不和を抱えた134組の夫婦を、約8か月のカップルセラピー2種類に分け、終了後5年間追った。行動を変える練習を中心にした方法と、違いへの理解と受け止め(受容)を重視した方法を比べると、5年後に明らかな改善が見られたのは受容重視で50.0%、行動中心で45.9%だった。別居・離婚は25.7%と27.9%だった。受容重視は終了後2年までは有意に上回ったが、その後は差が縮まった。
対象: 米国の夫婦134組 / 限界: 専門家による治療を受けた夫婦の結果で、恋人どうしや自分たちだけの工夫に同じ効果があるかはわからない。
Baucomら(2015年)[3]
同じ134組のデータを分析した論文。受容を重視した方法は、二人の違いへの理解と許容を深め、感情面での受け止めと共感を促すものだと説明している。また、終了時に改善していた夫婦のうち、5年後も改善を保っていたのは56%だった。
対象: 上と同じ134組(268人) / 限界: 治療を受けた夫婦に限った分析で、改善が長続きする理由のすべてがわかったわけではない。
Joelら(2018年、ユタ大学の発表)[4]
別れるかどうか迷っている人の理由を集めて整理すると、続けたい理由は27種類、別れたい理由は23種類に分かれた。別れたい理由の上位は、相手の性格の問題、信頼の裏切り、相手が心を閉ざすことだった。参加者の約半数は、続けたい理由と別れたい理由の両方を挙げていた。
対象: 別れを考えている交際中・結婚中の人(オンライン調査) / 限界: 大学の発表による要約で、各調査の人数はここでは確認できなかった。
| 研究で見たもの | わかったこと | 数字 |
|---|---|---|
| くり返される口論の話し方 | 歩み寄るほど関係の質が高く、責める・避けるほど低い[1] | 584人 |
| 受容を重視したセラピー | 深刻な不和でも、5年後に約半数が改善[2] | 50.0%(134組中) |
| 改善の続き方 | 終了時に改善した夫婦の一部は、5年後に元に戻っていた[3] | 維持は56% |
| 別れるか迷う理由 | 約半数が、続けたい理由と別れたい理由の両方を持っていた[4] | 27種類と23種類 |
03見極めのサインと、小さな一歩
見るべきは「違いがあるか」ではなく、違いを落ち着いて話せるか、責める・避けるがくり返されていないかです。以下は研究から考えた、今日からできる工夫です。
ぶつかるテーマを2つに分ける
最近の喧嘩を3つ書き出し、「話し合えば片づきそう」か「何度も形を変えて戻ってくる」かに分ける。後者は、解決より付き合い方を考えるテーマだと位置づけ直す。
所要 5分
直近の喧嘩の話し方を振り返る
そのとき自分と相手が「歩み寄った」「責めた」「避けた」のどれだったかを、それぞれ一言でメモする。責める・避けるが続いているなら、テーマより話し方を先に見直す。
所要 5分
「変えてほしい」を「わかってほしい」に言い換える
「節約してよ」ではなく「お金が減ると不安になる」のように、自分の気持ちと理由を先に伝える。相手を変えるより、お互いの理由を知ることを目標にする。
所要 10分
続けたい理由と別れたい理由を両方書く
紙を2つに分けて書き出す。両方あるのは珍しくない。続けたい理由が「一緒にいて楽しい」なのか「今さら離れられない」なのかも、一言添えておく。
所要 10分
ただし、「違い」と「危険なサイン」は別のものです。相手の考えを否定され続ける、友人づきあいやお金を制限される、怖くて意見が言えない。こうした状態は相性の問題ではなく、支配や心理的な攻撃にあたる可能性があります(モラハラをする人の行動パターンの研究)。この場合、「受け止める」努力を続ける必要はありません。
- 違いの範囲: 意見がぶつかっても、お互いが自分の考えを口にできる。
- 見直したい範囲: 責める・黙り込むが続き、話し合いが毎回途中で終わる(黙り込む「ストーンウォーリング」の記事)。
- 相談したい範囲: 意見を言うと怒鳴られる、人間関係やお金を制限される、怖さを感じる。
04距離の取り方と相談先
別れるかどうかは、一人で急いで決めなくて大丈夫です。二人で話すのが難しいときは、第三者に入ってもらうことも選択肢になります。
- 結論を出す期限を、少し先に置く。迷いの中で両方の理由があるのは、研究でも約半数に見られた状態です。
- 二人の話し合いがいつも責める・避けるで終わるなら、カップルカウンセリングなど専門家の力を借りる。深刻な不和を抱えた夫婦でも約半数が改善した一方、約4分の1は別居・離婚していました。支援は関係を続けるためだけでなく、納得して決めるためにも使えます。
- 信頼できる友人に、喧嘩の内容ではなく「自分がどう感じているか」を話してみる。
05よくある質問
価値観の違いと別れの判断について、よくある疑問に確認できた研究の範囲で答えます。
価値観が合わないなら、別れたほうがいいですか?
違いがあることだけでは、別れるべきかは決まりません。研究では、同じテーマでくり返す喧嘩でも、歩み寄る話し方ができている人ほど関係の質が高いと報告されています。迷うときは、違いそのものより「その違いを落ち着いて話せるか」を手がかりにしてください。
同じことで何度も喧嘩するのは、相性が悪い証拠ですか?
それだけでは証拠になりません。同じテーマでくり返す喧嘩は、研究で「シリアル・アーギュメント(くり返される口論)」と呼ばれています。584人の調査では、くり返すこと自体より、責める・避ける話し方が多いほど関係の質が低いという関連が見られました。
別れたい気持ちと続けたい気持ちが両方あるのは、おかしいですか?
おかしくありません。別れを考えている人を調べた研究では、約半数が「続けたい理由」と「別れたい理由」の両方を挙げていました。迷いがあるのは自然なことです。
カップルカウンセリングは効果がありますか?
深刻な不和を抱えた134組の夫婦を5年間追った研究では、約8か月のカウンセリングのあと、5年後に約半数が明らかに改善していました。ただし約4分の1は別居・離婚しており、必ず関係が続くわけではありません。
相性そのものの考え方は、価値観が同じ相手ほどうまくいくのかや関係が続くかを分ける「喧嘩の型」の研究もあわせて読むと整理しやすくなります。
出典
- Vanderbilt, R. R., & Solomon, D. H. (2022). The role of perceived resolvability in serial arguments across the lifespan. Personal Relationships, 29(1), 236-257. https://doi.org/10.1111/pere.12415
- Christensen, A., Atkins, D. C., Baucom, B., & Yi, J. (2010). Marital status and satisfaction five years following a randomized clinical trial comparing traditional versus integrative behavioral couple therapy. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 78(2), 225-235. https://doi.org/10.1037/a0018132
- Baucom, Atkins, Rowe, Doss, & Christensen (2015). Prediction of treatment response at 5-year follow-up in a randomized clinical trial of behaviorally based couple therapies. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 83(1), 103-114. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4324126/
- University of Utah (2017). Should I stay or go?(Joel, S., MacDonald, G., & Page-Gould, E. (2018). Wanting to stay and wanting to go: Unpacking the content and structure of relationship stay/leave decision processes. Social Psychological and Personality Science, 9(6), 631-644 の大学発表) https://attheu.utah.edu/?p=24503


