手に入りにくい相手ほど魅力的に見えるのか。駆け引きの心理学研究

「簡単に振り向いてくれる人より、なびかない人の方が気になる」。恋愛の駆け引きとしてよく語られる話ですが、心理学ではこのテーマが50年以上研究されてきました。結論から言うと、単純な話ではありません。
3行でわかる
- 最初の実験では、単に「手に入りにくい」だけの相手は好かれず、「自分にだけ気がある」相手が最も好かれた。
- 駆け引きは「追いかけたい気持ち」を強める一方、「好意」そのものはむしろ下げることがある。
- 18件の研究をまとめたレビューでも、効果は条件次第で「効くとも効かないとも言える」という結論だった。
01「手に入りにくさ」だけでは好かれない
単に相手に興味がなさそうに振る舞うだけでは、好意は高まらないことが最初の研究でわかっている。
1973年に行われた古典的な実験では、複数の条件で「手に入りにくい」女性への好意を調べましたが、6つの実験のうち5つで、単純な「手に入りにくさ」が好意を高めるという結果は得られませんでした。唯一効果があったのは、「他の男性には興味がなさそうなのに、自分にだけは好意的」という、選択的な態度を見せた場合でした。
02科学的にわかっていること
駆け引きは「欲しい気持ち」と「好きな気持ち」を別々に動かし、必ずしも両方を高めるわけではない。
Walsterら(1973)[1]
「手に入りにくい」女性が好かれるのは、他の男性には興味がなさそうで、自分にだけ好意的な場合に限られた。単に冷たい態度を取るだけの条件では、好意はむしろ下がる傾向があった。
対象: 大学生を対象にした複数の実験 / 限界: 1970年代の実験で、時代背景や恋愛観の違いを考慮する必要がある。
Dai・Dong・Jia(2014)[2]
相手が駆け引きをすると、「追いかけたい気持ち(欲求)」は強まる一方、「好意そのもの(感情)」はむしろ下がることを示した。ただし、すでにその相手との関係を続けたいという気持ちが強い場合に限り、欲求も好意も両方高まることが確認された。
対象: 大学生を対象にした2つの実験 / 限界: 実験室での短期的な評価が中心で、実際の交際関係そのものを追跡したものではない。
Houle・Barker・Pronin(2023)[3]
「手に入りにくさ」を扱った18件の研究をまとめたレビュー。駆け引きが効くかどうかは、感じられる「不確実さ」と「難しさ」のバランス、相手への思い入れの強さ、不確実な状況への耐性、性別や愛着スタイルなど、複数の条件によって左右されると結論づけた。
対象: 2023年までに発表された18件の関連研究 / 限界: レビューであり新しい実験結果ではないため、条件ごとの効果の大きさまでは示していない。
03駆け引きに頼りすぎないために
わざと距離を置くより、興味の対象を自分に絞って見せる方が誤解が少ない。
冷たくするのではなく、選んでいる姿勢を見せる
誰にでも素っ気ないのではなく、「自分にとって特別」と伝わる態度の方が研究では支持されている。
相手の「欲しい」と「好き」を混同しない
駆け引きで関心を引けても、それが好意の高まりとは限らない。反応の変化を冷静に見る。
すでに脈がある相手にだけ使う
関係を続けたい気持ちが薄い相手に駆け引きをすると、興味そのものを失わせるリスクがある。
04よくある質問
誰にでも距離を置けば効果がある?
いいえ。最初の研究では、単に距離を置くだけでは好意は高まりませんでした。効果が出たのは「自分にだけ気がある素振りを見せ、他の人には興味がなさそうにする」という、選択的な距離の置き方をした場合だけでした。
「もっと欲しくなる」のと「もっと好きになる」のは同じこと?
研究では区別されています。相手が駆け引きをすると、追いかけたい気持ち(欲求)は強まる一方、好意そのもの(感情)はむしろ下がる傾向がありました。関係を続けたいという気持ちがすでにある場合に限り、両方が高まったと報告されています。
出典
- Walster, E., Walster, G. W., Piliavin, J., & Schmidt, L. (1973). "Playing hard to get": Understanding an elusive phenomenon. Journal of Personality and Social Psychology, 26(1), 113-121. https://doi.org/10.1037/h0034234
- Dai, X., Dong, P., & Jia, J. S. (2014). When does playing hard to get increase romantic attraction? Journal of Experimental Psychology: General, 143(2), 521-526. https://doi.org/10.1037/a0032989
- Houle, L., Barker, E., & Pronin, E. (2023). Playing Hard-to-Get: A New Look at an Old Strategy. Journal of Sex Research, 60(3). https://doi.org/10.1080/00224499.2022.2070117