危険な相手のサイン

モラハラ・ガスライティングかもしれないと気づいたら、最初にすること

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机の上に置かれたノートとペン
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関の資料をAIが調べて整理しました(特定の人を診断するものではありません。出典は末尾)。

「もしかして、これはモラハラなのかもしれない」。そう気づいた瞬間は、怖さや迷いで頭がいっぱいになりやすいものです。最初にすることは、相手を問い詰めることでも、すぐに別れを決めることでもありません。記録を残し、信頼できる1人に話し、安全の計画を立て、公的な窓口を知っておく。この4つの順番を、研究と内閣府の調査から整理します。

3行でわかる

  1. 内閣府の2023年度調査では、配偶者から被害を受けた人の44.2%が誰にも相談していなかった。いちばん多い理由は「相談するほどのことではない」だった。
  2. 被害を受けている女性1,152人の調査では、周囲の支えが多い人ほど、不安や抑うつのリスクが低かった。話せる相手は心を守る土台になる。
  3. 安全計画を一緒に立てる支援は、13件の試験をまとめたレビューで一定の効果が示されている。日本では #8008 で近くの相談センターにつながる。

01何が起きているのか

「気づいたのに動けない」のは珍しいことではありません。被害を受けた人の4割以上が誰にも相談しておらず、その半数は「相談するほどではない」と感じていました。

モラハラ(言葉や態度による精神的な嫌がらせ)やガスライティング(自分の記憶や感覚を疑わせる関わり方)は、殴る・蹴るのように目に見える形をとりません。そのため「自分が大げさなだけかも」と考えて、誰にも話さないまま時間が過ぎがちです。

内閣府は2023年11〜12月、全国の18〜59歳5,000人を対象に調査を行い、2,950人から回答を得ました[1]。結婚したことのある1,838人のうち、配偶者から「人格を否定するような暴言」「交友関係や行き先、電話・メールを細かく監視・制限する」などの心理的攻撃を受けたことがある人は18.0%でした。

44.2%

配偶者から何らかの被害を受けた462人のうち、誰にも相談しなかった人の割合(内閣府 2023年度調査)

相談しなかった204人に理由を聞くと、上位は次のとおりでした(複数回答)。

相談しなかった理由割合
相談するほどのことではないと思った52.5%
自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思った28.9%
自分にも悪いところがあると思った28.9%
相談してもむだだと思った19.6%

一方、相談した人の相談先は「友人・知人」34.8%、「家族や親戚」29.9%が中心でした。警察は3.0%、配偶者暴力相談支援センターや男女共同参画センターは1.9%にとどまっています。身近な人には話せても、公的な窓口まではたどり着きにくい様子がうかがえます。

02研究でわかっていること

話せる相手がいることは心の不調のリスク低下と結びつき、安全計画を一緒に立てる支援には一定の効果が報告されています。ただし効果の大きさには幅があります。

Coker ら(2002)[2]

家庭医の診療所に通う女性1,152人を調べた研究では、心理的なものを含む交際相手からの暴力が、不安・抑うつ・PTSD症状などと結びついていた。そのうえで、被害を受けている女性のなかでは、周囲の支え(ソーシャルサポート)が多い人ほど、不安のリスクが約0.3倍、心の健康が悪いと感じるリスクが約0.5倍と低かった。

対象: アメリカの18〜65歳の女性1,152人(1997〜1999年) / 限界: 一時点の調査で、支えが不調を防いだという因果関係までは示していない。

Rivas ら(2015, コクラン・レビュー)[3]

被害を受けた女性への「アドボカシー」(相談に乗り、安全計画づくりを手伝い、必要な支援先につなぐこと)の効果を、13件のランダム化比較試験、計2,141人分でまとめた。医療機関での短い支援では、うつ状態になる人が少なかった(2件、149人)。一方、短い支援で身体的暴力が減る効果は、3件の統合では確認されなかった。

対象: 15〜65歳の女性2,141人(13件の試験) / 限界: 試験ごとのやり方の差が大きく、多くは人数が少ない。証拠の確かさは「中程度〜非常に低い」と評価されている。

Glass ら(2022)[4]

交際相手からの暴力を経験した女子大学生346人を、安全計画アプリ「myPlan」を使うグループと、一般的なウェブの安全情報を見るグループに分けて12か月追った。どちらのグループも被害と抑うつは減った。myPlanのグループでは、試した安全行動のうち「役に立った」割合が増えるほど、被害の得点が下がっていた。

対象: アメリカ2州・41大学の女子学生346人 / 限界: 両グループとも改善しており、アプリだけの効果は一部の指標に限られる。アメリカの大学生の結果で、そのまま日本に当てはまるとは限らない。

03見抜くサインと、身を守る小さな一歩

最初の一歩は「記録」「1人に話す」「安全の計画」の3つです。相手を変えようとする前に、自分の側の足場を固めます。

まだ迷っている段階なら、サインを確かめるところから始めてもかまいません。ガスライティングの初期サインや、モラハラをする人の行動パターンの記事で、研究で報告されている特徴を整理しています。

1

起きたことを短く記録する

日時、言われたこと・されたこと、そのときの自分の気持ちを1〜2行で書きます。「自分の記憶が正しいのか」と揺らいだときの支えになり、相談するときにも状況を説明しやすくなります。共有しているスマホや、相手がパスワードを知っているアカウントは避けます。

所要 1回3分

2

信頼できる人に1人だけ話す

全部を説明しなくてかまいません。「最近ちょっと関係がしんどい」の一言からで十分です。上の調査でも、相談先の中心は友人や家族でした。相手に友人や家族と会うのを嫌がられているなら、そのつながりを1本だけでも残しておくことが大切です。

所要 5分の連絡

3

「もしもの時」を決めておく

怖いと感じたときに連絡する人、行ける場所、持ち出したい物(身分証・保険証・常備薬・通帳など)の置き場所を、紙に書いておきます。安全計画は、窓口の相談員と一緒に作ることもできます。

所要 15分

相手に「それはモラハラだ」と突きつけるのは、記録と相談先を確保してからでも遅くありません。相手の反応は予測できず、言い返されたり、自分の感覚のほうを否定されたりすることもあります。

04距離の取り方と相談先

「DVかどうかわからない」段階でも、公的な窓口に相談できます。#8008に電話すると、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。

  • DV相談ナビ(局番なし #8008): 近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる(受付時間は各センターによる)[5]。
  • DV相談+(0120-279-889): 内閣府が設けた窓口。電話は24時間、チャットは12時〜22時。「これってDVかな?」という相談も受け付けている[6]。
  • 警察相談専用電話(#9110): 緊急ではないが警察に相談したいとき。
  • 110番: 命や身体の危険を感じたときは、ためらわずに。

距離を置くか、関係を続けるかを今すぐ決める必要はありません。「なぜ離れられないのか」と自分を責めてしまうときは、トラウマボンディングの研究も参考になります。この記事は相手を診断するものではありません。心身の不調が続くときは、医療機関や相談窓口に相談してください。

05よくある質問

気づいたあとに迷いやすい点を、確認できた資料の範囲で答えます。

モラハラかどうかはっきりしなくても相談していいの?

相談してかまいません。内閣府の「DV相談+」は「これってDVかな?」という段階の相談も受け付けると案内しています。内閣府の調査では、相談しなかった人の52.5%が「相談するほどのことではないと思った」と答えていました。迷っている段階こそ、話して整理する場として使えます。

相手に「それはモラハラだ」と伝えたほうがいい?

伝える前に、まず記録と相談先を確保しておくと安心です。相手の反応は予測できず、言い返されたり、自分の感覚のほうを否定されたりすることもあります。どう伝えるか、伝えるかどうかも含めて、相談窓口と一緒に考えられます。

記録はどこに残せばいい?

相手に見られない場所に残します。共有しているスマホやパソコン、相手がパスワードを知っているアカウントは避け、信頼できる人に預ける、紙に書いて職場や実家に置くなどの方法があります。日時・言われたこと・そのときの自分の気持ちを短く書くだけで十分です。

誰に話せばいいかわからないときは?

DV相談ナビ(#8008)に電話すると、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。24時間電話を受け付けるDV相談+(0120-279-889)もあります。命の危険を感じるときは110番してください。

出典

  1. 内閣府男女共同参画局 (2024). 男女間における暴力に関する調査(令和5年度調査)報告書. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/r05_boryoku_cyousa.html
  2. Coker AL, Smith PH, Thompson MP, McKeown RE, Bethea L, Davis KE (2002). Social support protects against the negative effects of partner violence on mental health. Journal of Women's Health & Gender-Based Medicine, 11(5). https://doi.org/10.1089/15246090260137644
  3. Rivas C, Ramsay J, Sadowski L, et al. (2015). Advocacy interventions to reduce or eliminate violence and promote the physical and psychosocial well-being of women who experience intimate partner abuse. Cochrane Database of Systematic Reviews. https://doi.org/10.1002/14651858.CD005043.pub3
  4. Glass NE, Clough A, Messing JT, et al. (2022). Longitudinal Impact of the myPlan App on Health and Safety Among College Women Experiencing Partner Violence. Journal of Interpersonal Violence. https://doi.org/10.1177/0886260521991880
  5. 内閣府男女共同参画局. DV相談ナビ(#8008). https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html
  6. 内閣府. DV相談+(DV相談プラス). https://soudanplus.jp/