付き合い始めに違和感を覚えたら、どう動くか。ペースを落とす・周りに聞く・「いや」への反応を見る

付き合い始めてまだ間もないのに、「何か引っかかる」と感じることがあります。そのとき、すぐに別れを決める必要も、気のせいだと打ち消す必要もありません。動き方は3つです。関係のペースを自分で落とす。周りの人の目を借りる。小さな「いや」を伝えて、相手の反応を見る。研究と内閣府の調査から、その根拠を整理します。
3行でわかる
- 内閣府の2023年度調査では、交際相手がいた人の18.0%が、何らかの暴力の被害を受けたことがあった。違和感は珍しいことではない。
- 付き合っている本人より、友人や家族のほうが関係の行く末を正しく予測できたという研究がある。迷ったら、信頼できる人の目を借りる。
- 同棲などの後戻りしにくい段階へ「流れで」進まず、自分で決める。小さな境界線への反応は、相手を知る手がかりになる。
01何が起きているのか
付き合い始めは、相手を良く見ようとする気持ちが強い時期です。違和感を打ち消しやすく、そのまま関係が深まることがあります。
出会ってすぐの強い好意や、最初だけ魅力的な態度など、気になるサインの見分け方はラブボミングの記事や第一印象と自己愛の記事で整理しています。この記事は、その先の「気づいたあと、どう動くか」を扱います。
内閣府は2023年度、全国の18〜59歳を対象に調査を行いました[1]。交際相手がいた(いる)2,112人のうち、交際相手から身体的暴行・心理的攻撃・経済的圧迫・性的強要のいずれかを受けたことがある人は18.0%でした。女性では22.7%、男性では12.0%です。
18.0%
交際相手がいた2,112人のうち、交際相手から何らかの暴力の被害を受けたことがある人の割合(内閣府 2023年度調査)
被害を受けた381人に、そのとき関係をどうしたかを聞いた結果は次のとおりです。
| 被害を受けたときの行動 | 割合 |
|---|---|
| 別れた | 49.9% |
| 別れたいと思ったが、別れなかった | 21.3% |
| 別れたいとは思わなかった | 18.9% |
「別れなかった」81人の理由で最も多かったのは「相手が変わってくれるかもしれないと思ったから」の40.7%でした。次いで「相手が別れることに同意しなかったから」が30.9%、「別れるとさみしいと思ったから」が27.2%です。違和感を「相手が変わるはず」で保留にしやすいことがうかがえます。
02研究でわかっていること
外からの目は関係の行く末をよく当て、流れでなく考えて決める人ほど関係の満足度が高い傾向があります。言葉による攻撃は、のちの身体的な暴力に先立つことがあります。
MacDonald・Ross(1999)[2]
大学生とそのルームメイト、親に、学生の交際がどのくらい続くかを予測してもらい、追跡した。学生本人は関係の良い面に目を向け、より楽観的で自信もあったが、明確な予測の当たり方はルームメイトや親より低い傾向があった。
対象: 大学生と、そのルームメイト・親(2つの追跡研究) / 限界: 一方で、本人が答えた関係の質そのものは、1年後に続いているかをよく予測していた。本人の感覚が無意味なわけではない。
Agnew ら(2001)[3]
カップルの友人たちに関係をどう見ているかを聞き、3回にわたって追跡した。友人の見方はカップル本人より厳しめで、なかでも女性側の友人は、別れを特に正しく予測していた。カップルが友人に関係の様子を打ち明けていることが、予測の正しさを支えていた。
対象: 北米の異性カップルと、その友人たち / 限界: 予測の正しさを調べた研究で、友人に相談すれば関係が良くなるという効果を示したものではない。
Owen・Rhoades・Stanley(2013)[4]
交際中・同棲中・既婚の252人を調べた。相手選びや関係の進め方を「流れで(スライディング)」ではなく、よく考えて決めていると答えた人ほど、相手への献身と関係の満足度が高く、浮気などの関係外の関わりが少なかった。
対象: アメリカの18〜60歳の252人(オンライン調査) / 限界: 一時点の調査で、考えて決めることが良い関係を生んだという因果関係までは示していない。
Murphy・O'Leary(1989)[6]
婚約中の393組から、結婚前に身体的な攻撃がなかった人を選び、結婚後30か月まで追跡した。言葉などによる心理的な攻撃が、その後に初めて起きる身体的な攻撃を予測していた。この結果は男女とも同じだった。
対象: 婚約中の393組から選んだ人 / 限界: 1989年に発表された結婚初期の研究で、交際初期の若い人にそのまま当てはまるとは限らない。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
違和感に気づいたら、白黒をつける前に「ペースを落とす」「周りに聞く」「小さないやを伝える」の3つを試します。相手を試すためではなく、自分の判断材料を増やすためです。
関係のペースを自分で落とす
会う頻度、連絡の量、同棲・合鍵・お金の貸し借りなど、後戻りしにくい決めごとを急がないと決めます。Stanleyら(2006)は、同棲のように抜けにくさを増やす段階へ「流れで」進むと、合わない関係でも続いてしまうことがあると論じています[5]。内閣府の調査でも、交際相手から被害を受け、同棲経験があった176人の77.8%が同棲期間中にも被害を受けていました[1]。
所要 決めるだけなら5分
信頼できる人に、事実だけを話してみる
「こう言われた」「こういうことがあった」と、出来事をそのまま伝えて感想を聞きます。外からの目は関係の行く末をよく当てることがあります。内閣府の調査でも、交際相手から被害を受けた人の相談先で最も多かったのは「友人・知人」の48.6%でした。
所要 15分ほど
小さな「いや」を伝え、反応を見る
「今週は友達と過ごす」「スマホは見せない」など、ふつうの関係なら受け入れられる範囲の希望を伝えます。受け止めて調整してくれるか、怒る・責める・何度も押してくるかを見ます。
所要 その場で1分
「いや」を伝えたあとの反応は、次のように整理できます。内閣府はデートDVの例として、大声で怒鳴る、交友関係を制限する、行動を監視・制限する、メールなどをチェックすることを挙げています[7]。
- 残念がっても、理由を聞いて受け入れる。別の案を一緒に考える。
- 不機嫌になるが、時間がたつと話し合える。様子を見ながら、ペースを落としたままにする。
- 怒鳴る、責める、無視する、連絡や行動を細かく確認してくる。デートDVの例に当たる反応で、1人で抱えず相談を考える段階。
04距離の取り方と相談先
関係を続けるかどうかは、自分で決めてかまいません。内閣府は「別れることに相手のOKはいりません」と伝えています。怖さを感じたら、境界線を試す前に相談先を確保します。
同棲や合鍵など後戻りしにくい決めごとが少ないうちは、距離の調整もしやすくなります。違和感が続くなら、会う間隔を空ける、2人きりの時間を減らすなど、少しずつ距離を取る方法もあります。
一方で、相手の反応が怖いと感じるなら、小さな「いや」を1人で試す必要はありません。友人や家族に先に話しておく、相談窓口とどう伝えるかを考える、といった準備を優先します。交友関係を制限されている場合は、友達に会わせたくない恋人の研究も参考になります。すでに言葉の攻撃が続いているなら、モラハラに気づいたら最初にすることで、記録と安全の計画の立て方を整理しています。
- DV相談ナビ(#8008): 内閣府がデートDVの相談先として案内している番号です。近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。
- DV相談+(0120-279-889): 24時間電話を受け付けています。チャットは12時から22時です。
- 命の危険を感じるときは、迷わず110番してください。
この記事は相手を診断するものではありません。心身の不調が続くときは、医療機関や相談窓口に相談してください。
05よくある質問
付き合い始めの違和感で迷いやすい点を、確認できた資料の範囲で答えます。
付き合い始めの違和感は、気のせいのことも多いの?
気のせいのこともあります。ただ、内閣府の調査では、交際相手がいた人の18.0%が何らかの暴力の被害を受けていました。すぐに結論を出さず、ペースを落として様子を見ることで、気のせいかどうかを確かめる時間が取れます。
友達や家族に相手を悪く言われたら、従うべき?
従う必要はありませんが、理由は聞いてみる価値があります。研究では、ルームメイトや親、友人のほうが、付き合っている本人より関係の行く末を正しく予測した例が報告されています。一方で、本人が感じている関係の質にも予測する力がありました。両方を材料にして、自分で決めます。
境界線を伝えたら怒られた。もう別れるべき?
1回の反応だけで決める必要はありませんが、怒鳴る・責める・監視するといった反応が続くなら、内閣府がデートDVの例に挙げる行動に当たります。別れるかどうかに相手の同意はいりません。怖さがあるときは、#8008などの窓口に先に相談してください。
違和感があるうちに同棲を始めても大丈夫?
急がないほうが安心です。同棲は関係から抜けにくさが増える段階で、「流れで」進むと合わない関係でも続きやすいと指摘されています。違和感が解消してから、自分で考えて決めるのがおすすめです。
出典
- 内閣府男女共同参画局 (2024). 男女間における暴力に関する調査(令和5年度調査)報告書 Ⅱ-3 交際相手からの被害経験. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/r05_boryoku_cyousa.html
- MacDonald TK, Ross M (1999). Assessing the Accuracy of Predictions about Dating Relationships: How and Why Do Lovers' Predictions Differ from those Made by Observers? Personality and Social Psychology Bulletin. https://doi.org/10.1177/0146167299259007
- Agnew CR, Loving TJ, Drigotas SM (2001). Substituting the forest for the trees: Social networks and the prediction of romantic relationship state and fate. Journal of Personality and Social Psychology. https://doi.org/10.1037/0022-3514.81.6.1042
- Owen J, Rhoades GK, Stanley SM (2013). Sliding Versus Deciding in Relationships: Associations With Relationship Quality, Commitment, and Infidelity. Journal of Couple & Relationship Therapy. https://doi.org/10.1080/15332691.2013.779097
- Stanley SM, Rhoades GK, Markman HJ (2006). Sliding Versus Deciding: Inertia and the Premarital Cohabitation Effect. Family Relations. https://doi.org/10.1111/j.1741-3729.2006.00418.x
- Murphy CM, O'Leary KD (1989). Psychological aggression predicts physical aggression in early marriage. Journal of Consulting and Clinical Psychology. https://doi.org/10.1037/0022-006X.57.5.579
- 内閣府男女共同参画局. 恋人のことを「怖い」「息苦しい」と感じているあなたへ(デートDV). https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/date_dv/victim.html
- 内閣府. DV相談+(DV相談プラス). https://soudanplus.jp/


