危険な相手のサイン

友達に会わせたくない恋人は危険なサインか。「社会的孤立」と支配の研究

約5分で読めます

窓の外を見ている人物のシルエット
Photo: Kate Williams kmw152 / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(特定の人を診断するものではありません。出典は末尾)。

「友達と会うと機嫌が悪くなる」「家族との付き合いを減らしてほしいと言われる」。本人は「それだけ私を大切にしているから」と感じていても、研究ではこの「交友関係を狭められること」そのものが、関係の安全性を見る重要な手がかりとして扱われています。孤立という視点から、何がわかっているかを整理します。

3行でわかる

  1. 研究者のあいだでは、交友関係を狭める「孤立させる」ことが、支配(強圧的コントロール)の中心的な手口の一つとして位置づけられている。
  2. 220人の交際相手による殺人の被害者と343人の被害経験のある女性を比べた研究では、支配的な相手からの孤立が、命に関わる危険の有意な予測因子だった。
  3. 孤立は単独の出来事ではなく、監視やお金の管理など他の制限と組み合わさって進むパターンとして捉えると見抜きやすくなる。

01「友達を遠ざけられる」の正体

交友関係を狭めることは、研究では「強圧的コントロール」と呼ばれる支配のパターンの中心的な手口の一つとして位置づけられている。

1970年代から家庭内暴力を研究してきた社会学者エヴァン・スターク(Evan Stark)が提唱した「強圧的コントロール(coercive control)」という考え方では、暴力は単発の出来事ではなく、相手の自律性を奪っていく持続的なパターンとして捉えられます。その手口の一つが、友人・家族との接触を減らさせる「孤立」です。相手を遠くに引っ越させる、外出を嫌がる、連絡先を共有させるなど、方法はさまざまですが、目的は共通して「周囲に相談できる人を減らす」ことにあります。本人は「心配だから」「大切にしているから」という言葉で説明されることが多く、孤立させられている側も、それを愛情表現と区別しにくいのが特徴です。

02研究でわかっていること

孤立は支配のパターンを測る指標として研究で使われており、支配的な相手からの孤立は、命に関わる危険とも関連づけられている。

Stark・Hester(2019)[1]

強圧的コントロールに関する研究を振り返ったレビューでは、相手を支配する度合い(コントロールの強さ)が、身体的な暴力だけに結びつけられていたさまざまな悪い結果を予測することが新しい研究で示されていると報告されている。別れたあとの暴力や性的暴力も、その「悪い結果」に含まれるとされた。

対象: 強圧的コントロールに関する研究の文献レビュー / 限界: レビュー論文であり、個別の研究ごとに対象やデザインは異なる。

Cheung・Tiwari・Chan・Fong・Chau・Yuen・Tolman(2020)[2]

香港の女性1,198人を対象に、心理的な虐待を測る質問紙(PMWI)の中国語版を検証した研究では、「支配・孤立」(交友関係の制限や監視など)と「言葉・感情による虐待」の2つの要素が、もとの英語版と同じように確認された。「支配・孤立」の尺度は内部一貫性(信頼性の指標)が0.9を超え、交際・被害経験が異なるグループを統計的に区別できた。

対象: 香港の女性1,198人(地域のセンターやシェルターから募集) / 限界: 女性を対象にした調査で、男性や性的マイノリティのカップルには別の確認が必要。

Campbell ら(2003)[3]

アメリカ11都市で行われた大規模な比較研究では、交際相手による殺人(femicide)の被害者220人と、被害経験はあるが殺害されていない女性343人を比較した。その結果、相手から離れようとした時期の「支配的な相手からの孤立(estrangement, especially from a controlling partner)」が、殺害のリスクを有意に高める要因の一つとして確認された。

対象: 殺人被害者220人の関係者への聞き取りと、被害経験のある女性343人 / 限界: すでに深刻な暴力があった関係を対象にしており、すべての交際関係に当てはまるとは限らない。

Barnes ら(2022)[4]

イギリスの出生コホート調査(ALSPAC)のデータを使い、女性2,127人・男性1,145人を追跡した研究では、12歳までの被害経験が13〜14歳ごろの孤独感と関連し、その孤独感が18〜21歳での交際相手からの暴力・被害の経験と関連していた。孤立や孤独感が、その後の被害につながる経路の一つとして示された。

対象: イギリスの出生コホート参加者、女性2,127人・男性1,145人 / 限界: 相関関係を示す調査研究で、孤独感が直接の原因であるとまでは証明されていない。

03見抜くサインと、身を守る小さな一歩

交友関係の制限が単独で起きているか、他の制限(監視・お金・ノーが言えない空気)とセットになっているかを見ることが手がかりになる。

1

制限されていることを書き出す

「誰と」「どんな理由で」会うのを嫌がられたかを、スマホのメモに短く記録しておきます。1回では気づきにくいパターンが見えてきます。

所要 3分

2

他の制限がないか確認する

スマホの中身を見せるよう求められる、お金の使い方を細かく管理される、断ると不機嫌になるなど、交友関係以外の制限が重なっていないかを見ます。嫉妬や束縛を愛情と感じやすい理由は別の記事で詳しく扱っている。

所要 会うたびに意識するだけ

3

今でもつながっている人に連絡する

しばらく会っていない友人や家族に、近況だけでも連絡してみます。連絡そのものが難しいと感じる場合、それも一つのサインです。

所要 5分の連絡

04距離の取り方と相談先

「心配だから」という説明があっても、制限に納得できないと感じるなら、それは我慢すべきことではなく、距離を置く理由になり得る。

  • 制限が強まっている、怖いと感じる場面があるなら、一人で抱え込まず記録を残しておく。
  • 連絡先や居場所を、まだつながりのある友人・家族の誰か一人にだけでも共有しておく。
  • 不安や被害を感じたら、DV相談ナビ(局番なし #8008、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる)、内閣府DV相談+(0120-279-889、24時間電話対応)、警察相談専用電話(#9110)、法テラス(0570-078374)に相談できる。命の危険を感じる場合は110番を。

05よくある質問

友達と会うのを嫌がられるだけで「支配」と判断していいのか

1回だけ、1つの行動だけでは判断できません。研究では、交友関係の制限・監視・経済的な制限など複数の手口が組み合わさっているパターンを「強圧的コントロール」として扱っています。交友関係の制限が他の制限(スマホの監視、お金の管理、ノーと言えない空気)とセットになっていないかを見ることが手がかりになります。

なぜ「孤立」がそれほど危険なサインとされるのか

周囲に相談できる人がいなくなると、エスカレートしても気づかれにくく、助けを求めにくくなるためです。220人の交際相手による殺人の被害者と343人の被害経験のある女性を比較した研究では、相手から離れようとした時期に、支配的な相手からの孤立が有意な危険因子として確認されました。

「心配だから」と言われたら、どう考えればいいのか

心配という感情自体は自然なものですが、それが具体的な行動の制限(外出・交友・お金・スマホ)とセットになっていないかを見ます。心配を理由にした制限に納得できないと感じたら、その違和感を無視しなくてよいとされています。

危険な相手のサイン チェックリストで確かめる
当てはまる言動を選ぶと、研究でわかっていることと相談先を表示します。無料・入力は送信しません。

出典

  1. Stark E, Hester M. (2019). Coercive Control: Update and Review. Violence Against Women, 25(1), 81-104. https://doi.org/10.1177/1077801218816191
  2. Cheung DST, Tiwari A, Chan KL, Fong DYT, Chau PH, Yuen FKH, Tolman RM. (2020). Validation of the Psychological Maltreatment of Women Inventory for Chinese Women. Journal of Interpersonal Violence, 35(21-22), 4614-4639. https://doi.org/10.1177/0886260517715602
  3. Campbell JC, et al. (2003). Risk factors for femicide in abusive relationships: results from a multisite case control study. American Journal of Public Health, 93(7), 1089-1097. https://doi.org/10.2105/ajph.93.7.1089
  4. Barnes M, Szilassy E, Herbert A, Heron J, Feder G, Fraser A, Howe LD, Barter C. (2022). Being silenced, loneliness and being heard: understanding pathways to intimate partner violence & abuse in young adults. BMC Public Health, 22, 1562. https://doi.org/10.1186/s12889-022-13990-4