敬語がタメ口に、LINEの文体が似てくるのは脈ありサインか。言葉づかいの一致の研究

敬語だった相手がふとタメ口になった。LINEの文面が、いつの間にか自分と似てきた。恋愛メディアでは、こうした変化が「脈ありサイン」としてよく紹介されます。結論から言うと、言葉づかいの一致は好意や関係の続きやすさと関係するという研究がある一方、ケンカ中にも高まり、大規模な再検証では効果はごく小さいとされています。好意の決め手にはならない、補助的な手がかりです。
3行でわかる
- スピードデート40組の研究では、言葉づかいが一致したペアの33.3%が互いに「また会いたい」と希望し、一致が低いペアの9.1%を上回った。
- ただし一致は、カップルが問題を話し合う場面では批判的な言動とも結びつく。好意ではなく「会話の調子を強める」ものと考えられている。
- 383組を統合した再検証では、一致と関係の満足度の関連はごく小さかった。敬語がタメ口になるのも、驚きや感心で自然に起きる切り替えで、好意の証拠ではない。
01何が起きているのか(悩みの正体)
研究で調べられているのは「言葉づかいの一致(LSM)」です。話の中身ではなく、代名詞・接続詞・副詞などの目立たない言葉の使い方が、二人の間でどれだけ似ているかを測ります。
LINEの文体が似てくる、敬語がタメ口になる。こうした変化を見ると、「心を開いてくれたのかも」と期待したくなります。心理学では、会話する二人の言葉づかいが似てくる現象を「言葉づかいの一致(Language Style Matching、LSM)」と呼び、研究が進んでいます。
注意したいのは、研究で測っているものが、私たちが「似てきた」と感じるものとは違う点です。LSMが注目するのは、英語でいえば「I」「the」「but」「very」のような機能語です。機能語は短く、頻繁に使われ、ほとんど無意識に処理されます。研究者は、この一致を話し手本人も訓練を受けた観察者も見分けられないと述べています。絵文字や語尾が似てきたという「目に見える変化」は、研究のLSMとは別のものです。しぐさの一致については「カメレオン効果」の記事で扱っています。この記事では、言葉と文章の一致に絞って見ていきます。
02研究でわかっていること
言葉づかいの一致は好意や交際の続きやすさと関係するという報告がある一方、ケンカ中にも高まり、大規模な再検証では効果はごく小さいとされています。
Ireland・Slatcher ほか(2011年)[1]
アメリカの大学で行われたスピードデート(1回4分)から40組の会話を文字に起こし、言葉づかいの一致度を測った。一致度が中央値より高いペアでは33.3%が「また会いたい」と互いに希望したのに対し、中央値以下のペアでは9.1%だった。本人たちが答えた「似ている気がする」という感覚と一致度には、ほとんど関係がなかった。
対象: 大学生40組(平均19.6歳) / 限界: 英語の会話で、組数が少ない。
同じ論文の研究2[1]
交際中のカップル86組が10日間にやり取りしたチャット(インスタントメッセージ)を分析した。一致度が中央値より高いカップルの76.7%が3か月後も交際を続けていたのに対し、中央値以下では53.5%だった。この関係は、本人が答えた関係への満足度とは別に見られた。
対象: 交際中の大学生86組(平均19.0歳、交際期間は平均約1.3年) / 限界: 相関の研究で、一致が関係を続かせたという因果関係までは示していない。
Bowen・Winczewski・Collins(2017年)[3]
カップル91組に、二人の間の問題か、片方の個人的な悩みについて話し合ってもらい録画した。悩みを支える会話では、言葉づかいの一致が高いほど前向きな気持ちが多かった。一方、二人の問題を話し合う場面では、一致が高いほど批判的・否定的な言動が多く、相手が気持ちに応えてくれているという感覚は低かった。
対象: 交際中のカップル91組 / 限界: 1回の話し合いの録画で、長い関係の流れまでは見ていない。
Bierstetel ほか(2020年)[4]
5つの研究室の5つのデータ(計383組・766人)を統合して分析した。言葉づかいの一致と関係への満足度の関連は相関係数0.10とごく小さく、関係を続けたい気持ち(コミットメント)とは関連が見られなかった。著者らは「関連があるとしても、ごく小さな効果だろう」とまとめている。
対象: 5研究・383組 / 限界: 好意の始まりではなく、すでに交際中のカップルの満足度とコミットメントを調べたもの。
Ireland・Pennebaker(2010年)[2]
大学生がさまざまな文体の質問文に答える課題では、参加者は自然と質問文の言葉づかいに合わせていた。一方で、文体の一致を意図的に高めることはできなかった。また、第三者が「似ている」と判断したのは話の中身の一致で、機能語の一致ではなかった。
対象: 大学生1,744人ほか / 限界: 文章課題での結果で、恋愛の場面を直接調べたものではない。
陳(2004年)が紹介する日本語母語話者の初対面会話の分析[5]
敬語(です・ます)を基本にした初対面の会話8組・3,467発話を調べると、発話の15.1%がタメ口(だ体)だった。タメ口への切り替えは、相手の話に感心したとき(74.3%)や、自分の気持ちを打ち明けるとき(95.7%)などに起きやすく、親しみを示し、話しやすい雰囲気をつくる働きがあるとされる。
対象: 日本語母語話者同士の初対面会話8組 / 限界: 恋愛感情との関係は調べていない。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
言葉づかいの一致から読めるのは「会話にお互い入り込んでいるかもしれない」までです。好意か対立かは会話の調子しだいなので、ほかの行動と合わせて判断します。
- 読めること: 自然に言葉づかいが揃うやり取りは、二人がお互いの話に入り込んでいる状態と関係しやすい
- 読めないこと: 好意があるかどうか。一致は言い合いの場面でも高まり、交際中のカップルでも満足度との関連はごく小さい
- 敬語とタメ口: 初対面の敬語の会話でも発話の約15%はタメ口になる。驚いた・感心したときに出やすく、親しみの表現ではあっても恋愛感情の証拠ではない
- 注意点: 研究の多くは英語の会話で、日本語のLINEの文体を直接調べた研究は見当たらない
自分の受け止め方から確かめる
「文体が似てきた」と感じる部分の多くは、絵文字や語尾など目に見える特徴です。研究で測られた機能語の一致とは別物なので、それだけで判断しない。
所要 1分
会話の空気とセットで見る
言葉づかいの一致は会話の調子を強める方向に働く。楽しいやり取りの中で似てきたのか、言い合いの中で似てきたのかを分けて考える。
所要 2分
言葉以外の行動を並べて見る
返信のペース、会う約束の有無、相手からの質問など、ほかの行動も合わせて見る。一つのサインで結論を出さない。
所要 3分
気になるなら率直に聞く
文面から推測を重ねて不安になるより、会ったときや落ち着いたタイミングで、気持ちを言葉で確かめる。
所要 5分
返信の速さについては既読からの返信スピードの記事、連絡の減り方については連絡頻度が減るのは冷めたサインかの記事もあわせてどうぞ。
04距離の取り方と相談先
文面の小さな変化で一喜一憂しすぎず、相手の気持ちは行動と言葉で確かめます。連絡がしつこい・怖いと感じたら、一人で抱えず相談できます。
- 文体が似てきても、離れていっても、それ一つで相手の本音を決めつけない
- 相手の文体を意図的に真似して気を引こうとしなくてよい。研究では、人は文体の一致を意図的に高められなかった
- 断っても連絡が続く、待ち伏せや脅しのようなメッセージがあるなど身の危険を感じるときは、警察相談専用電話(#9110)に相談する
- 相手の反応への不安で眠れない・落ち込みが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に相談できる
05よくある質問
言葉づかいやLINEの文体と好意について、よくある疑問にお答えします。
LINEの文体や語尾が似てくるのは脈ありサインですか?
好意の手がかりの一つにはなりますが、それだけで脈ありとは言えません。研究で好意と結びついたのは、代名詞や接続詞のような目立たない機能語の一致で、本人も第三者もほとんど気づけないものです。また、言葉づかいの一致はケンカ中にも高まることが報告されています。
敬語からタメ口に変わったら、距離が縮まったと考えていいですか?
親しみを表す切り替えであることは多いものの、好意の証拠にはなりません。初対面の日本語の会話を分析した研究では、敬語で話している最中でも発話の約15%がタメ口になり、驚いたときや思い出しながら話すときなどに自然に切り替わっていました。
相手の文体をわざと真似すれば好かれますか?
研究ではそうした効果は確かめられていません。文章の課題で、参加者は文体の一致を意図的に高めることができなかったと報告されています。研究で好意と関係していたのは自然に起きる一致で、真似で作り出せるものではないと考えられます。
しぐさ・ボディランゲージ索引で「LINEの文体が似てくる・タメ口になる」を見る
ほかのしぐさも50種類から調べられます。4択クイズもあります。
出典
- Ireland, M. E., Slatcher, R. B., Eastwick, P. W., Scissors, L. E., Finkel, E. J., & Pennebaker, J. W. (2011). Language style matching predicts relationship initiation and stability. Psychological Science, 22(1), 39-44. https://doi.org/10.1177/0956797610392928
- Ireland, M. E., & Pennebaker, J. W. (2010). Language style matching in writing: Synchrony in essays, correspondence, and poetry. Journal of Personality and Social Psychology, 99(3), 549-571. https://doi.org/10.1037/a0020386
- Bowen, J. D., Winczewski, L. A., & Collins, N. L. (2017). Language style matching in romantic partners' conflict and support interactions. Journal of Language and Social Psychology, 36(3), 263-286. https://doi.org/10.1177/0261927X16666308
- Bierstetel, S. J., Farrell, A. K., Briskin, J. L., Harvey, M. W., Gable, S. L., Ha, T., Ickes, W., Lin, W. F., Orina, M. M., Saxbe, D., Simpson, J. A., Ta, V. P., & Slatcher, R. B. (2020). Associations between language style matching and relationship commitment and satisfaction: An integrative data analysis. Journal of Social and Personal Relationships, 37(8-9), 2459-2481. https://doi.org/10.1177/0265407520923754
- 陳文敏(2004). 台湾人上級日本語学習者の初対面接触会話におけるスピーチレベル・シフト:日本語母語話者同士による会話との比較. 日本語教育論集, 20, 国立国語研究所. https://doi.org/10.15084/00001888


