しぐさが似てくるのは好意のサインか。「カメレオン効果」の研究でわかったこと

気づくと、相手と同じタイミングで飲み物に手を伸ばしていた。姿勢や口ぐせが似てきた。これは好意のサインなのでしょうか。「ミラーリングで好かれる」というテクニックもよく紹介されます。研究を見ると、しぐさの一致は好意の手がかりになる一方、わざと真似をする効果は、言われているほど確かではありません。
3行でわかる
- 1999年の実験では、人は初対面の相手のしぐさを無意識に真似しやすく、真似をされた側は相手への好感が高まった。
- 139人が総当たりで会話した研究では、先に相手を好きだと感じた人ほど真似をし、その真似が相手からの好感を高めるという順番が確認された。
- 一方、アバターに真似をさせた事前登録の実験では、真似によって親しみや信頼が高まる効果は見られなかった。
01何が起きているのか
カメレオン効果とは、相手の姿勢やしぐさ、表情を無意識に真似してしまう現象です。好意があると起きやすい一方、真似そのものに好かれる力があるかは、はっきりしていません。
名前は、周りに合わせて体の色を変えるカメレオンから来ています。1999年に心理学者のChartrandとBarghが実験で示し、この名前をつけました。
自分で意識して真似しているわけではありません。相手の動きを見るだけで、同じ動きをしやすくなる仕組みがあると考えられています。
ここで大事なのは、「好意があるから真似をする」のか、「真似をされると好意が生まれる」のかを分けて考えることです。この2つは、研究での確かさが違います。
02研究でわかっていること
しぐさの一致は好意の結果として起きやすいことが確認されています。ただし、意図的に真似をして好感を上げる効果は、再現されないことがあります。
Chartrand & Bargh(1999)[1]
初対面の相手と課題に取り組むと、参加者は相手のしぐさを無意識に真似していた。協力者が参加者の姿勢や動きを真似した実験では、会話がスムーズに進み、真似をされた側の相手への好感が高まった。共感しやすい人ほど、真似をしやすい傾向もあった。
対象: 初対面の2人組で行った3つの実験 / 限界: 実験室での初対面の短いやりとりで、恋愛関係を直接調べたものではない。
Salazar Kämpfら(2018)[2]
139人が総当たりで2人ずつ会話した(合計618組分のデータ)。真似の大部分は、その2人の組み合わせに特有のものだった。先に相手を好きだと感じた人ほど相手を真似し、その真似が、相手からの好感をさらに高めるという順番が見られた。
対象: 139人(618組分の会話) / 限界: 初対面の会話で、恋愛感情そのものを測った研究ではない。
Hale & Hamilton(2016)[3]
仮想空間で、参加者の頭や体の動きを真似するアバターと、真似しないアバターと会話してもらった。最初の実験(50人)では真似するアバターへの親しみが高かったが、事前に計画を登録して行った2つ目の実験(40人)では、親しみにも信頼にも効果は見られなかった。
対象: 研究1は50人、研究2は40人 / 限界: 相手が人間ではなくアバターで、現実の会話とは条件が違う。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
しぐさの一致は、好意の可能性を示す手がかりの1つにとどめます。他のサインと合わせて見ることが大切です。
一致が「自然に」起きているかを見る
会話が盛り上がったときに、姿勢や話すテンポがそろってくるかを見ます。研究では、先に好意があると真似が起きやすくなっていました。
所要 会話中
一度のしぐさで判断しない
飲み物を同時に飲んだ、同じ姿勢になった、という1回の偶然では判断できません。会話の流れや、相手が話を広げてくれるかなど、他の手がかりと合わせて見ます。
所要 数秒
「真似されたから好き」と決めつけない
わざと真似をするテクニックもあります。研究では、真似によって信頼が高まらないこともありました。真似されているかどうかより、約束を守るか、あなたの話を聞くかといった行動を見ます。
所要 数秒
04距離の取り方と相談先
しぐさが似てくることは、関係を築くうえで自然なことです。ただし、相手を判断する決め手にはしないでください。
- しぐさの一致は、友人や同僚との間でも起きます。恋愛感情だけのサインではありません。
- 共感しやすい人ほど、相手の真似をしやすい傾向があります。一致が少ないからといって、好意がないとは限りません。
- 「ミラーリングで相手を落とす」といった方法には、研究の裏付けが弱いものもあります。
- 関係に不安やつらさがあるときは、一人で抱え込まず、信頼できる人に相談してください。
05よくある質問
しぐさの一致について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
相手としぐさが似てくるのは、脈ありのサインですか?
可能性を示す手がかりの1つです。139人の研究では、先に相手を好きだと感じた人ほど相手を真似していました。ただし、友人同士でも起きるため、それだけで恋愛感情とは言えません。
ミラーリング(わざと真似をする)で好かれることはできるの?
確実ではありません。1999年の実験では真似をされた側の好感が高まりましたが、事前に計画を登録して行った2016年の実験では、真似による親しみや信頼の効果は見られませんでした。
カメレオン効果とは何ですか?
相手の姿勢やしぐさ、表情を、無意識に真似してしまう現象です。1999年にChartrandとBarghが実験で示しました。
真似をする人と、しない人がいるのはなぜ?
研究では、真似のしやすさに個人差があり、共感しやすい人ほど真似をしやすい傾向が見られました。また、真似の多くは、その2人の組み合わせによって決まっていました。
出典
- Chartrand, T. L., & Bargh, J. A. (1999). The chameleon effect: The perception-behavior link and social interaction. Journal of Personality and Social Psychology, 76(6), 893-910. https://doi.org/10.1037/0022-3514.76.6.893
- Salazar Kämpf, M., Liebermann, H., Kerschreiter, R., Krause, S., Nestler, S., & Schmukle, S. C. (2018). Disentangling the Sources of Mimicry: Social Relations Analyses of the Link Between Mimicry and Liking. Psychological Science, 29(1), 131-138. https://doi.org/10.1177/0956797617727121
- Hale, J., & Hamilton, A. F. de C. (2016). Testing the relationship between mimicry, trust and rapport in virtual reality conversations. Scientific Reports, 6, 35295. https://doi.org/10.1038/srep35295