しぐさ・ボディランゲージ

パワーポーズで自信はつくのか。姿勢と心理の再現研究でわかったこと

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The summit of Gokyo Ri. Ngozumpa glacier, the largest and longest glacier in the Himalayas, is right below, along with commanding views over
Photo: Vyacheslav Argenberg / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開されている研究論文をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。特定の人を診断・判定するものではありません。出典は末尾にあります。

大事な場面の前に、両手を腰に当てて胸を張る。「パワーポーズで自信がつく」という話を聞いたことがある人は多いはずです。結論から言うと、ホルモンや行動まで変わるという有名な結果は、大規模な再現実験で確かめられませんでした。気分への小さな効果は残りますが、中心は「大きく構える」より「縮こまらない」ことでした。相手の大きな姿勢から何が読めるのかも、あわせて整理します。

3行でわかる

  1. 2010年の42人の研究では、1分ずつ2つのポーズを取っただけでホルモンとリスクを取る行動が変わったと報告された。しかし200人の再現実験では、ホルモンにも行動にも差は出なかった。
  2. 73の研究をまとめたメタ分析では、気分や行動の差を生んでいたのは「縮こまった姿勢」の方だった(効果量0.45)。大きく構える姿勢の上乗せは0.06とほぼゼロ。
  3. 大きく構えた姿勢は、周りに強そう・魅力的に見えやすい。ただ、しぐさから地位や力が読めると思われている度合いは、実際の結びつきより強い。

01何が起きているのか(悩みの正体)

パワーポーズは、短い姿勢だけで自信やホルモンまで変わるとして広まった考えです。ところが、その土台になった研究は再現されず、主張の多くが見直されました。

パワーポーズとは、両手を腰に当てる、机に足を乗せるなど、体を大きく広げる姿勢のことです。2010年の研究がきっかけで、講演や書籍を通じて世界中に広まりました。「面接の前にトイレで2分」という使い方を聞いたことがあるかもしれません。

一方で、心理学では2010年代に「有名な結果が別の研究者の追試で再現されない」という問題が大きく取り上げられました。パワーポーズは、その代表例の一つです。ここでは、何が確かめられ、何が確かめられなかったのかを分けて見ていきます。あわせて、他人の大きな姿勢をどう受け取ればよいかも扱います。

02研究でわかっていること

ホルモンとリスク行動への効果は、大規模な再現実験で確認されませんでした。気分への効果は小さく残りますが、その中心は「縮こまらないこと」です。

Carney・Cuddy・Yap(2010年)[1]

42人を「力強い姿勢」か「縮こまった姿勢」に割り当て、2つのポーズを1分ずつ取ってもらった。力強い姿勢の人はテストステロンが上がり、ストレスに関わるコルチゾールが下がり、「力がある」という感覚とリスクを取る傾向が高まったと報告された。

対象: 男女42人 / 限界: 人数が少ない。この後の再現実験と、筆頭著者自身の見解の変更によって、ホルモンと行動への効果は支持されなくなった。

Ranehill ほか(2015年)[2]

元の研究とほぼ同じ手順を、約5倍の200人(女性98人・男性102人)で行った。ポーズは1分ではなく3分ずつに延ばし、実験者にはどちらの条件か分からない設計にした。結果、「力がある」と感じる自己評価は上がったが、ホルモンにも、リスクを取る課題を含む3つの行動課題にも有意な差は出なかった。

対象: 男女200人 / 限界: 1回の実験の結果。ただし、元の研究規模の効果を95%以上の確率で検出できる設計だった。

Carney(2016年)[3]

2010年の論文の筆頭著者が、大学のサイトで見解を公表した。2015年以降に反証が積み重なったことを受け、「パワーポーズの効果が本物だとは考えていない」と明言している。

種類: 研究者本人による公式見解 / 限界: 新しいデータではなく、それまでの研究を踏まえた立場表明。

Elkjær ほか(2022年)[4]

5,819件の文献から条件に合う73の研究を選び、姿勢と気分・行動の関係をメタ分析(多くの研究をまとめて分析する方法)した。大きな姿勢と縮こまった姿勢の差は確かにあった。ただし差を生んでいたのは「縮こまった姿勢」の方で、普通の姿勢と比べた効果量は0.45。大きな姿勢と普通の姿勢の差は0.06とほぼゼロだった。

対象: 73の実験研究 / 限界: 研究ごとに姿勢の取らせ方や測り方が違う。著者らは、普通の姿勢を比べる対照群を入れた研究を今後増やすよう求めている。

Vacharkulksemsuk ほか(2016年)[5]

144回のスピード・デートを録画して分析すると、体を広げる姿勢が、相手から「また会いたい」と言われるかどうかを最もよく予測した。続く約3,000人のオンライン実験でも、大きく構えた写真の方が選ばれやすかった。その理由の一つは「支配的に見える」ことだった。

対象: スピード・デート144回、オンライン実験約3,000人 / 限界: 見る側の第一印象の研究で、その人が本当に自信家かどうかは調べていない。

Hall・Coats・LeBeau(2005年)[6]

視線・距離・体の動きなど、さまざまなしぐさと地位や支配性の関係をまとめたメタ分析。人が「このしぐさは地位の高さを示す」と信じている結びつきは、実際に観察された結びつきよりも強く、数も多かった。

対象: しぐさと地位・支配性に関する多数の研究 / 限界: 姿勢だけを扱った分析ではなく、しぐさ全般の傾向。

03見抜くサインと、身を守る小さな一歩

相手の大きな姿勢から読めるのは「強そうに見せている、または見えている」までです。自信や実力の中身は、姿勢ではなく行動で確かめます。

1

「強そう」と「自信がある」を分けて考える

大きく構えた姿勢は、周りに強そうな印象を与えやすい。ただ、それはあくまで見る側の受け取り方で、本人の中身の証拠ではない。

所要 1分

2

第一印象で決めない

初対面の場面では、姿勢の大きさが好印象を生みやすいと分かっている。大事な判断は、言葉や約束を守るかなど、行動を見てからにする。

所要 3分

3

自分が本番前にするなら「縮こまらない」で十分

効果の中心は、背中を丸めて小さくなる姿勢を避けることだった。特別なポーズを長く取る必要はない。

所要 1分

4

ポーズで変わるのは「気分」までと心得る

力がある感覚は上がっても、ホルモンや行動の変化は再現されていない。準備や練習の代わりにはならない。

所要 2分

04距離の取り方と相談先

姿勢の印象だけで相手を信じたり、自分を責めたりする必要はありません。人前での緊張が強く続くときは、専門の窓口に相談できます。

05よくある質問

パワーポーズと姿勢の心理について、よくある疑問にお答えします。

パワーポーズをすると、テストステロンが増えて強くなれるのですか?

そうとは言えません。2010年の42人の研究ではホルモンの変化が報告されましたが、200人で行った再現実験では、テストステロンにもコルチゾールにも差は出ませんでした。元の論文の筆頭著者も、2016年に「効果が本物だとは考えていない」と表明しています。

本番前にパワーポーズをする意味はまったくないのですか?

気分の面では、小さな意味があるかもしれません。再現実験でも「力がある」と感じる自己評価は上がりました。73の研究をまとめたメタ分析では、効果の中心は大きく構えることより「縮こまらないこと」でした。背中を丸めない程度で十分です。

胸を張って大きく構える人は、自信がある人なのですか?

そうとは限りません。大きく構えた姿勢は周りから強そうに見えやすく、恋愛の場面でも好印象につながりました。ただ、しぐさから地位や力が読み取れると思われている度合いは、実際の結びつきより強いとメタ分析で示されています。

出典

  1. Carney, D. R., Cuddy, A. J. C., & Yap, A. J. (2010). Power posing: Brief nonverbal displays affect neuroendocrine levels and risk tolerance. Psychological Science, 21(10), 1363-1368. https://doi.org/10.1177/0956797610383437
  2. Ranehill, E., Dreber, A., Johannesson, M., Leiberg, S., Sul, S., & Weber, R. A. (2015). Assessing the robustness of power posing: No effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science, 26(5), 653-656. https://doi.org/10.1177/0956797614553946
  3. Carney, D. R. (2016). My position on "Power Poses". University of California, Berkeley, Haas School of Business. https://faculty.haas.berkeley.edu/dana_carney/pdf_My%20position%20on%20power%20poses.pdf
  4. Elkjær, E., Mikkelsen, M. B., Michalak, J., Mennin, D. S., & O'Toole, M. S. (2022). Expansive and contractive postures and movement: A systematic review and meta-analysis of the effect of motor displays on affective and behavioral responses. Perspectives on Psychological Science, 17(1), 276-304. https://doi.org/10.1177/1745691620919358
  5. Vacharkulksemsuk, T., Reit, E., Khambatta, P., Eastwick, P. W., Finkel, E. J., & Carney, D. R. (2016). Dominant, open nonverbal displays are attractive at zero-acquaintance. PNAS, 113(15), 4009-4014. https://doi.org/10.1073/pnas.1508932113
  6. Hall, J. A., Coats, E. J., & LeBeau, L. S. (2005). Nonverbal behavior and the vertical dimension of social relations: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 131(6), 898-924. https://doi.org/10.1037/0033-2909.131.6.898