足を組む向きや組み方で性格はわかるのか。座り方の心理学を研究で検証

面接や合コンで、相手が脚を組む向きや座り方が気になったことはありませんか。「右の脚が上なら負けず嫌い」「脚を組むのは心を閉ざしているサイン」。そんな話を聞いたことがあるかもしれません。結論から言うと、脚の組み方や向きから性格や本音を読み取れるという考えを、直接裏づけた研究は見当たりませんでした。研究でわかっていることと、俗説との違いを整理します。
3行でわかる
- 脚を組む向き(右が上か左が上か)や組み方が性格・心理状態を示すという通説を、直接検証した研究は今回の調査では見当たらなかった。
- 体を大きく広げる「開いた姿勢」の人は、閉じた姿勢の人より支配的で魅力的だと評価される傾向が実験で確認された。ただしこれは見る側が受ける印象で、本人の本音を示すものではない。
- 非言語コミュニケーションを研究する専門家は、1つのしぐさだけで気持ちを「解読」できるという考え方そのものに懐疑的で、嘘発見の分野でも足や脚の動きに有意な差は見つかっていない。
01何が起きているのか(悩みの正体)
「脚の組み方で性格がわかる」という話の多くは、学術研究ではなく、身体言語(ボディランゲージ)を扱う実用書や講座の中で広まってきたものです。
「右足が上なら〇〇」「足首を組むのは控えめな人」。こうした一覧表は、書籍やSNSでよく見かけます。断定的で、覚えやすく、話のネタにもしやすいため広まりやすい一方、どの研究にもとづいているのかが示されないことがほとんどです。
非言語コミュニケーション(言葉を使わないやり取り)を専門に研究する心理学者たちは、こうした「しぐさの辞書」的な見方に、もともと慎重です。同じしぐさでも、場面・相手との関係・文化・その人の習慣によって意味が変わるため、1つの決まった答えに結びつけること自体が難しいと考えられています。
02研究でわかっていること
脚の組み方の向きや種類についての直接の研究は見当たりませんでした。一方、姿勢の「開き具合」が相手に与える印象や、脚の動きと嘘の関係は研究で調べられています。
Vacharkulksemsuk ら(2016年)[1]
スピードデーティング(144組)とオンラインデート(3,000件の「興味あり」反応)を分析した実験。体を大きく広げる「開いた姿勢」の人は、縮こまった「閉じた姿勢」の人より、相手から好意的な反応を受けやすかった(オンラインでは好意的反応が平均27%多かった)。写真の評価実験でも、開いた姿勢の人物は閉じた姿勢の人物よりはっきりと支配的だと評価された(平均3.78点 対 2.44点)。
対象: スピードデート参加者24人、オンラインデート利用者ベースの3,000反応、写真評価853人 / 限界: 魅力の第一印象を調べたもので、脚を組む向きなど個別の動作は調べていない
Patterson・Fridlund・Crivelli(2023年)[2]
非言語コミュニケーションに関する「よくある4つの誤解」を整理したレビュー論文。しぐさを「身体言語」として固定的な解読ルールがあるかのように扱うこと自体が誤解だと指摘し、同じしぐさでも場面・相手の文化や性格・本人の目的によって意味が変わるとしている。「秘密の言語を解読できる」とうたう商品やセミナーには注意するよう述べている。
対象: 非言語コミュニケーション研究のレビュー / 限界: 個別のしぐさの正否を1件ずつ検証したものではなく、研究分野全体の考え方を整理したもの
Denault・Zloteanu(2022年)[3]
「ボディランゲージの専門家」が広める主張を検証した論文。非言語的な手がかりは、ほぼ例外なく特定の心理・感情状態と一直線には結びつかないと指摘。腕組みを「自己鎮静のサイン」とする主張についても、単に寒さや姿勢の都合による可能性を挙げている。
対象: ボディランゲージ分析に関する主張の検証レビュー / 限界: 脚の組み方を名指しで扱った部分はなく、腕組みなど近い動作についての指摘が中心
Li・Song・Li・Li(2024年)[4]
中国の成人50人(嘘をついた人25人・本当のことを話した人25人)を対象にした模擬取り調べの実験。足や脚の動きの多さを比べたところ、嘘をついた群(平均6.02回)と本当のことを話した群(平均5.48回)の間に、統計的に意味のある差は見られなかった。
対象: 中国の成人50人 / 限界: 実験室での模擬場面で、実際の取り調べや日常会話にそのまま当てはまるとは限らない
4つの研究を並べると、「脚をどちら向きに組むか」という具体的な通説を直接支持する研究は見つかりませんでした。はっきりしているのは、腕や脚を含めて体を大きく広げるか縮めるかという「開き具合」は、見ている側の印象(支配的に見えるか、魅力的に見えるか)に影響するということです。これは座っている本人の本当の気持ちを証明するものではなく、あくまで「周りからどう見えるか」の研究だという点に注意が必要です。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
脚の組み方の向きから相手の本音は読めません。一方、自分が開いた姿勢を取ると相手に良い印象を与えやすいことは、心得ておく価値があります。
- 読めること: 体を大きく広げた開いた姿勢は、相手に自信や親しみやすさの印象を与えやすい(あくまで印象の話)
- 読めないこと: 脚を組む向きや組み方から、相手の性格・好意・本音を言い当てること
- 注意点: 脚や腕を組む「閉じた姿勢」は、緊張や防御だけでなく、単に楽な姿勢や習慣、寒さ、スカートなど服装の都合であることも多い
「どちらの脚が上か」で相手を判断しない
今回の調査では、向きや組み方に意味を結びつける研究は見つかりませんでした。気になっても、それだけで結論を出さないようにしましょう。
所要 1分
面接や商談では、自分の姿勢を少し開いてみる
体を縮めすぎず、肩や腕を楽に広げる姿勢は、相手に良い印象を与えやすいことが実験で確認されています。
所要 意識するだけ
「閉じた姿勢」を見たら、理由を決めつけない
寒い・服装の都合・単なる癖かもしれません。表情や会話の内容とあわせて、総合的に見ましょう。
所要 1分
本音は、しぐさより言葉と行動の積み重ねで確かめる
1回のしぐさで判断せず、何度も見られるパターンかどうかで考える方が、研究の慎重な姿勢と合っています。
所要 継続的に
04距離の取り方と相談先
しぐさの解釈に自信が持てないときは、しぐさだけで関係を判断せず、言葉や態度の積み重ねで様子を見ていくことが助けになります。
- 「脚の組み方=性格」と決めつけず、話の内容や表情とあわせて相手を見る
- 自分が脚や腕を組みたくなったときも、緊張からか単に楽だからか、一度振り返ってみる
- 相手のしぐさを「解読」できると謳う情報は、根拠となる研究が示されているか確かめる
- 人間関係の中で不安や萎縮が強く続くと感じるときは、一人で抱え込まず信頼できる友人や専門家(心療内科・カウンセリング等)に相談する
05よくある質問
脚を組む向き(右が上か左が上か)で性格はわかりますか?
根拠は見つかりませんでした。脚を組む向きや組み方が特定の性格・心理状態を示すという通説を直接検証した研究は、今回の調査では見当たりません。非言語コミュニケーションの研究者は、1つのしぐさだけで気持ちを解読することに懐疑的です。
脚を組んでいる人は、心を閉ざしているのですか?
そう言い切れません。脚を組む・腕を組むといった姿勢は、防御的な気持ちだけでなく、単に楽な姿勢や習慣、寒さなどでも起こります。研究者は、1つのしぐさだけで気持ちを判断することに警鐘を鳴らしています。
脚を組まずに開いて座ると、どう見られますか?
実験では、脚を含め体を大きく広げる「開いた姿勢」の人は、より支配的で魅力的だと評価される傾向がありました。ただしこれは見ている側が受ける印象で、座っている本人の本当の気持ちを示すものではありません。
しぐさ・ボディランゲージ索引で「脚を組む(組み方や向き)」を見る
ほかのしぐさも32種類から調べられます。4択クイズもあります。
出典
- Vacharkulksemsuk T, Reit E, Khambatta P, Eastwick PW, Finkel EJ, Carney DR. (2016). Dominant, open nonverbal displays are attractive at zero-acquaintance. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(15), 4009-4014. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4839399/
- Patterson ML, Fridlund AJ, Crivelli C. (2023). Four Misconceptions About Nonverbal Communication. Perspectives on Psychological Science, 18(6). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10623623/
- Denault V, Zloteanu M. (2022). Darwin's illegitimate children: How body language experts undermine Darwin's legacy. Evolutionary Human Sciences, 4, e46. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10426054/
- Li H, Song H, Li M, Li H. (2024). Nonverbal cues to deception: insights from a mock crime scenario in a Chinese sample. Frontiers in Psychology, 15, 1331653. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10884279/