なぜLINEだと気持ちを読み違えるのか。文字だけでは冗談も感情も思ったほど伝わらない研究

LINEで送った冗談が通じなかった。相手の短い返事が、怒っているように見えた。そんな読み違いは、どちらかの性格のせいとは限りません。研究では、送る側は「伝わったはず」と思い込みやすく、読む側は短い文や句点を素っ気なく受け取りやすいことがわかっています。文字だけでは、気持ちは思ったほど伝わりません。
3行でわかる
- 人はメールで、冗談や皮肉、感情を実際よりうまく伝えられると思い込んでいました。
- 友人なら伝わると見込んでも、友人の読み取りは他人より正確ではありませんでした。
- 英語の実験では、1語の返事に句点をつけるだけで「誠実さに欠ける」と読まれました。
01何が起きているのか(文字だけで読み違える理由)
対面なら声の調子や表情が気持ちを補いますが、文字にはそれがありません。送る側は自分の頭の中の声で読み返すため、その欠けに気づきにくいのです。
同じ「いいよ」でも、笑顔で言うのと、ため息まじりに言うのとでは意味が変わります。対面の会話では、声の高さや間、表情、身ぶりがその違いを運んでいます。
文字のメッセージでは、その手がかりがほとんど消えます。困るのは、送る側がそれに気づきにくいことです。自分が冗談のつもりで書いた文は、読み返しても冗談の口調で聞こえてしまいます。
一方、読む側は足りない手がかりを自分で補います。そのとき、不安なときほど悪いほうに読みやすくなります。既読や返信の速さが気になる不安の仕組みは既読・未読への不安はどこから来るのか、返信の速さそのものは既読からの返信スピードは好意のサインかにまとめています。この記事では、文面の「調子」がなぜずれるのかを見ていきます。
02研究でわかっていること
送る側は伝わる度合いを高く見積もり、親しい相手ならなおさらそう思います。読む側は、短い文や句点の打ち方から、書き手が意図しない感情を読み取ることがあります。
Kruger・Epley・Parker・Ng(2005年)[1]
5つの実験で、人はメールで気持ちや口調を、実際よりうまく伝えられると思い込んでいることを示した。皮肉やユーモアのつもりで書いた文は、書いた本人には皮肉やユーモアに「聞こえる」。そのため、相手も同じように受け取ると考えやすい。著者らはこの思い込みの原因を、自分の視点から離れにくい「自己中心性」にあると考えた。
対象: メールで文を送り、受け取り方を比べた5つの実験 / 限界: メールを使った実験で、恋人どうしのLINEを調べたものではない。大学の紹介記事では、知り合いどうしでも読み違いは多かったと説明されている[7]。
Riordan・Trichtinger(2017年)[2]
メールの書き手と読み手の自信と正確さを比べた3つの実験。書き手も読み手も「正しく伝わった・読めた」という自信は高かったが、実際の正確さはそれに見合っていなかった。書き手は、他人より友人のほうが正しく読んでくれると見込んだが、友人の読み取りは他人より正確ではなかった。
対象: メールのやり取りの実験 / 限界: 恋愛関係の相手ではなく、友人と他人を比べた研究。
Gunraj ら(2016年)・Houghton ら(2018年)[3][4]
「yup」のような1語の返事に句点をつけると、つけない場合より誠実さに欠ける、素っ気ないと受け取られた。手書きのメモでは、この差は見られなかった。Houghton らは、句点そのものが否定的なのではなく、1語のやり取りで句点を打つと「ぶっきらぼう」「これで終わり」という意図が伝わると結論づけた[5]。
対象: アメリカの大学生 / 限界: 英語の文での結果で、日本語の「。」が同じように読まれるかはわからない。
Poirier・Cook・Klin(2025年)[5]
大学生80人・60人・78人を対象にした3つの実験。「No. Just. Go」のように1語ごとに句点を打つ文や、1語ずつ別のメッセージに分けて送る文は、嫌悪やいら立ちといった感情を伝えると受け取られた。文字の打ち方が、話し言葉の間や調子の代わりになっている可能性があると著者らは考えている。
対象: アメリカの大学生 / 限界: 用意した文を評価してもらう実験で、実際のやり取りの中での受け取り方とは違う可能性がある。
Holtzman ら(2017年)[6]
ストレスのかかる課題のあとに、対面か文字メッセージで励ましを受けた若者を比べた2つの実験。実験1は親しい友人から(64人)、実験2は同年代の協力者から(188人)励ましを受けた。どちらの実験でも、対面の励ましのほうが、文字よりも前向きな気分が高かった。
対象: 若い成人 / 限界: 励ましへの満足度の差が出たのは実験2だけ。実験室での短い場面の比較。
| 読み違えやすい場面 | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 冗談・皮肉を文字で送る | 送る側は伝わると思い込みやすい[1] | 読み違えやすい |
| 親しい相手なら伝わると考える | 友人の読み取りは他人より正確ではなかった[2] | 当てにならない |
| 1語の返事に句点をつける | 英語では誠実さに欠ける・素っ気ないと読まれた[3][4] | 状況しだい(日本語は未確認) |
| 1語ずつ区切って送る | いら立ちなどの感情が読み取られた[5] | 状況しだい |
| 落ち込んだ相手を文字で励ます | 対面のほうが前向きな気分が高かった[6] | 対面のほうが伝わりやすい |
03読み違えのサインと、防ぐ小さな一歩
短い返事にざわついたら、まず「文字だから欠けている情報がある」と考えます。送る側は気持ちを言葉で書き足し、大事な話は声で伝えるのが近道です。以下は研究から考えた工夫です。
ざわついたら、別の読み方を2つ考える
「怒っている」と感じた返事に、「忙しいだけ」「いつもの書き方」など別の読み方を2つ並べる。文面だけでは決められないと確認するための作業です。
所要 1分
相手のふだんの書き方と比べる
もともと短文や句点が多い人なら、その書き方自体に意味はないことが多い。1通だけで判断せず、いつもの文面と比べてみる。
所要 2分
冗談は「冗談だよ」と言葉で添える
送る前に、相手の立場で読み返す。皮肉やいじりは、自分の頭の中の声がないと伝わらない前提で、一言足すか、会ったときに回す。
所要 30秒
気持ちの言葉を1つ添える
「了解」だけでなく「了解、助かる」「ありがとう、うれしい」のように、気持ちの言葉を1つ添える。声の調子の代わりを、言葉で補う工夫です。
所要 10秒
大事な話と励ましは、声か対面で
喧嘩の続き、謝罪、落ち込んだ相手への励ましは、文字で長く続けない。「電話していい?」と切り替える。
所要 1通
自分の緊張や気持ちは相手に見えていると思い込む「透明性の錯覚」も、同じ自己中心的な見積もりから起きます(緊張が顔や声に出ている気がするのは本当か)。言わなくても察してほしいという期待が生むすれ違いはなぜ「察してほしい」はすれ違いを生むのか、絵文字の効果は絵文字やスタンプが多いのは好意のサインかで扱っています。
04距離の取り方と相談先
文面の調子が気になっても、1通で関係を判断せず、確かめる場を文字の外に移します。不安が続いて眠れない、怖いメッセージが届くときは、一人で抱えず相談先を使ってください。
- 読み違いが不安なときは、文字で問い詰めない。「さっきの、怒ってる?」を何通も送ると、さらに読み違いが重なりやすい。
- 確かめるなら、会ったときや電話で、責めない言い方で一度だけ聞く。
- はっきり脅す・おとしめる言葉が続くなら、それは読み違いの問題ではない。文面を保存し、距離を取ることを考える。
05よくある質問
文字のやり取りでの読み違いについて、確認できた研究の範囲で答えます。
LINEで「。」をつけると冷たく見えるのは本当ですか?
英語のメッセージの実験では、「yup.」のような1語の返事に句点をつけると、つけない場合より誠実さに欠ける・素っ気ないと受け取られました。手書きのメモでは同じ差は出ていません。日本語のLINEで同じことが起きるかは、今回の出典では確かめられていません。
仲のいい相手なら、文字でも気持ちは伝わりますか?
思うほどは伝わりません。メールの実験では、書き手は友人なら正しく読んでくれると見込みましたが、友人の正解率は他人と比べて高くありませんでした。親しさに頼りすぎず、大事な気持ちは言葉で書くか、声で伝えるほうが確実です。
相手の返信が素っ気ないのは、怒っているからですか?
文面だけでは判断できません。研究では、短い返事や句点が、書き手の意図とは関係なく素っ気なく読まれることがあると報告されています。気になるときは決めつけず、会ったときや電話で軽く確かめるのが安全です。
冗談や皮肉がLINEで伝わらないのはなぜですか?
書き手は自分の声の調子を思い浮かべながら読み返すため、相手にも同じように伝わると思い込みやすいからです。Kruger らの5つの実験では、人はメールで思っているほど気持ちや口調を伝えられていないことが示されました。
出典
- Kruger, J., Epley, N., Parker, J., & Ng, Z.-W. (2005). Egocentrism over e-mail: Can we communicate as well as we think? Journal of Personality and Social Psychology, 89(6), 925-936. https://doi.org/10.1037/0022-3514.89.6.925
- Riordan, M. A., & Trichtinger, L. A. (2017). Overconfidence at the keyboard: Confidence and accuracy in interpreting affect in e-mail exchanges. Human Communication Research, 43(1), 1-24. https://doi.org/10.1111/hcre.12093
- Gunraj, D. N., Drumm-Hewitt, A. M., Dashow, E. M., Upadhyay, S. S. N., & Klin, C. M. (2016). Texting insincerely: The role of the period in text messaging. Computers in Human Behavior, 55, 1067-1075. https://doi.org/10.1016/j.chb.2015.11.003
- Houghton, K. J., Upadhyay, S. S. N., & Klin, C. M. (2018). Punctuation in text messages may convey abruptness. Period. Computers in Human Behavior, 80, 112-121. https://doi.org/10.1016/j.chb.2017.10.044
- Poirier, R. C., Cook, A. M., & Klin, C. M. (2025). Read. This. Slowly: Mimicking spoken pauses in text messages. Frontiers in Psychology, 16, 1410698. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1410698
- Holtzman, S., DeClerck, D., Turcotte, K., Lisi, D., & Woodworth, M. (2017). Emotional support during times of stress: Can text messaging compete with in-person interactions? Computers in Human Behavior, 71, 130-139. https://doi.org/10.1016/j.chb.2017.01.043
- NYU Stern School of Business「E-mail Etiquette: More Critical than You Might Think」(Kruger らの研究の紹介) https://www.stern.nyu.edu/experience-stern/faculty-research/justin-kruger-email-research
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」(電話・SNSの相談窓口) https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/


