「体の浮気」と「心の浮気」、許せないのは男女で違うのか。嫉妬の研究

「男性は体の浮気、女性は心の浮気が許せない」。そんな話を聞いたことがあるかもしれません。パートナーとの間で、浮気の線引きが合わずに不安になることもあるでしょう。研究を見ると、男女差は確かに見られる一方、聞き方や状況によって大きく変わることがわかってきました。
3行でわかる
- 2択で「体の浮気と心の浮気、どちらがつらいか」を聞くと、男性の方が体の浮気をつらいと答える差が、16〜19歳の1,266人でも見られた。
- 一方、2択以外の聞き方では男女差が消え、男女とも体の浮気の方をより強くつらいと答えた研究もある。
- 浮気の相手が同性の場合や、同性愛の人では、この男女差は見られなかった。
01何が起きているのか
「男性は体の浮気、女性は心の浮気に強く嫉妬する」という説は、進化心理学から提案されました。ただし、その根拠には今も議論があります。
この説では、男性は子どもが自分の子か確信できないため体の浮気に、女性はパートナーの協力を失うことを恐れて心の浮気に、より強く反応するよう進化したと考えます。
多くの研究は、「体の浮気」と「心の浮気」の場面を思い浮かべてもらい、どちらがよりつらいかを2択で選んでもらう方法を使ってきました。
一方で、この差は聞き方によって生まれているだけではないか、という反論もあります。どちらの立場にも研究があり、結論は一つにまとまっていません。
02研究でわかっていること
2択で聞くと男女差は安定して見られます。ただし、聞き方を変えたり、浮気の相手が同性だったりすると、差は小さくなったり消えたりします。
Larsenら(2021)[1]
16〜19歳の高校生1,266人に、浮気の場面を2択で答えてもらった。大人を対象にした研究と同じく、男子の方が女子より、体の浮気をつらいと答えた。年齢や恋人の有無、性経験は、この差に影響していなかった。
対象: 16〜19歳の高校生1,266人 / 限界: 2択の回答方式のみで、実際の浮気への反応を見たものではない。
DeStenoら(2002)[2]
男女差は2択で答えてもらったときにだけ見られ、ほかの測り方では差が出なかった。男女とも、体の浮気の方により強い嫉妬を感じると答えていた。考える余裕を奪う条件では、2択での差も消えた。
対象: 2つの実験の参加者 / 限界: 仮定の場面への回答で、現実の関係での反応とは異なる可能性がある。
Sagarinら(2012)[3]
異性愛の男女では、パートナーが異性と浮気する場面で男女差が見られたが、同性と浮気する場面では差がなかった。同性愛の男女では、どちらの場面でも男女差は見られなかった。
対象: ウェブ調査に答えた、さまざまな性的指向の人たち / 限界: 仮定の場面への回答にもとづく。
Pollet & Saxton(2020)[4]
339人と456人の2つの再現研究と、合計5,899人分のメタ分析で、恋敵の外見の魅力に対しては、女性の方がわずかに強く嫉妬する傾向があった。一方、恋敵の強さや支配性への反応に男女差は確認されなかった。
対象: 再現研究2件とメタ分析 / 限界: 効果は小さく、個人差の方が大きい。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
男女差の話より、2人にとって何が「浮気」なのかをすり合わせることが大切です。嫉妬が束縛に変わっていないかも確かめます。
「どこからが浮気か」を言葉にして話す
2人きりで食事、連絡のやりとり、SNSでのやりとりなど、どこからが嫌かを具体的に伝え合います。性別で決めつけず、相手本人の考えを聞きます。
所要 15分
自分がつらく感じるポイントを知っておく
体の浮気と心の浮気のどちらがつらいかは、性別より個人差が大きいことがあります。自分が何に一番傷つくかを知っておくと、気持ちを伝えやすくなります。
所要 5分
嫉妬が束縛になっていないかを見る
スマホを勝手に見る、交友関係を制限する、居場所を常に報告させるといった行動は、嫉妬ではなく支配のサインです。どちらの側でも起きていないかを確かめます。
所要 数秒
04距離の取り方と相談先
嫉妬そのものは自然な感情です。ただし、相手の行動を制限したり監視したりする形になったら、距離を取ることを考えてください。
- 「男なんてそういうもの」「女はこうだ」という決めつけは、研究の結論と比べても単純すぎます。
- 浮気の線引きは、付き合い始めや同棲・結婚の前など、関係が変わるタイミングで話し直すとよいです。
- 不安が強くて相手を責めてしまうときは、気持ちを「私は〜がつらい」と自分を主語にして伝えます。
- 監視や束縛が続くときは、一人で抱え込まず相談窓口を使ってください。
05よくある質問
浮気と嫉妬について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
男性は体の浮気、女性は心の浮気が許せないって本当?
2択で聞くと、そうした傾向は繰り返し見られます。ただし、ほかの聞き方では男女差が消え、男女とも体の浮気をよりつらいと答えた研究もあります。性別だけで決めつけない方がよいでしょう。
なぜ男女差があると考えられているの?
進化心理学では、男性は子どもが自分の子か確信できないため体の浮気に、女性はパートナーの協力を失うことを恐れて心の浮気に、強く反応するよう進化したと説明します。ただし、この説明には反論もあります。
恋敵が美人・イケメンだと嫉妬は強くなる?
合計5,899人分のメタ分析では、恋敵の外見の魅力に対して、女性の方がわずかに強く嫉妬する傾向がありました。ただし差は小さいものでした。
嫉妬するのは愛情の証ですか?
嫉妬は自然な感情ですが、スマホを勝手に見る、交友関係を制限するといった行動につながる場合は、支配のサインになりえます。
出典
- Larsen, P. H. H., Bendixen, M., Grøntvedt, T. V., Kessler, A. M., & Kennair, L. E. O. (2021). Investigating the emergence of sex differences in jealousy responses in a large community sample from an evolutionary perspective. Scientific Reports, 11, 6485. https://doi.org/10.1038/s41598-021-85997-7
- DeSteno, D., Bartlett, M. Y., Braverman, J., & Salovey, P. (2002). Sex differences in jealousy: Evolutionary mechanism or artifact of measurement? Journal of Personality and Social Psychology, 83(5), 1103-1116. https://doi.org/10.1037/0022-3514.83.5.1103
- Sagarin, B. J., Becker, D. V., Guadagno, R. E., Wilkinson, W. W., & Nicastle, L. D. (2012). A reproductive threat-based model of evolved sex differences in jealousy. Evolutionary Psychology, 10(3), 487-503. https://europepmc.org/article/MED/22947673
- Pollet, T. V., & Saxton, T. K. (2020). Jealousy as a Function of Rival Characteristics: Two Large Replication Studies and Meta-Analyses Support Gender Differences in Reactions to Rival Attractiveness But Not Dominance. Personality and Social Psychology Bulletin. https://doi.org/10.1177/0146167220904512