好きな人を見ると瞳孔は開くのか。瞳孔と好意・魅力の研究でわかったこと

「好きな人を見ると瞳孔が開く」という話を聞いて、相手の目をつい確かめたくなったことはありませんか。結論から言うと、関心や興奮を感じる対象を見ると瞳孔が広がることは、60年以上前から研究で確かめられています。ただし瞳孔は明るさや緊張でも大きく変わるため、会話中の相手の瞳孔から好意を読み取ることはできません。読めることと読めないことを、研究から切り分けます。
3行でわかる
- 関心や興奮を感じる相手・写真を見ると、瞳孔は広がる。オンラインデートの課題でも、瞳孔が大きく広がった相手ほど「会う」と選ばれやすかった。
- ただし瞳孔は、明るさ・見る距離・考えごと・緊張でも変わる。好意による変化はそれらよりずっと小さい。
- 研究は専用の機器で測った結果で、日常の会話で肉眼から好意を見抜けることは示されていない。
01何が起きているのか(悩みの正体)
瞳孔は「好き」ではなく「心が動いた」ことに反応します。関心・興奮・集中・不安のどれでも広がるため、好意だけを取り出すサインにはなりません。
瞳孔は「本音が出る場所」として語られがちです。実際、瞳孔を広げる筋肉は、興奮や緊張のときに働く交感神経につながっています。気持ちが高ぶると瞳孔が広がるのは、この仕組みによるものです。
一方で、2018年に発表された瞳孔研究のレビューは、瞳孔が反応するものを3つに整理しています。明るさ(明るいと縮む)、見る距離(近くを見ると縮む)、そして覚醒や頭の負荷(高まると広がる)です。人の瞳孔の直径はおよそ2〜8mmの間で変わります。好意や関心による変化は3つめに入ります。ただしこの反応は、快い刺激でも不快な刺激でも、興奮の強さが同じならほとんど変わらないとされています。
1. 明るさ: 明るいと縮み、暗いと広がる(変化が大きい)
2. 見る距離: 近くを見ると縮む(変化が大きい)
3. 覚醒・頭の負荷: 興奮・関心・集中・不安で広がる(変化は比較的小さい)
好意は3に含まれる一部にすぎません。
02研究でわかっていること
関心を引く相手を見ると瞳孔が広がること、相手選びの判断と瞳孔の大きさが関連することは確認されています。ただし、すべて明るさをそろえた機器での計測です。
Hess・Polt(1960年)[1]
興味を引く写真や感情をゆさぶる写真を見ると、瞳孔が広がることを記録した古典的な研究。見る人の性別によって、どの写真で大きく広がるかが違うことも報告された。
対象: 人とネコを対象にした予備的な報告 / 限界: 1960年の初期の測定で、写真の明るさの違いなどは現在ほど厳密に統制されていない。
Rieger・Savin-Williams(2012年)[3]
325人の男女に性的な映像を見せ、瞳孔の変化を自動で測った。おおむね、本人が答えた性的指向に合う相手の映像で瞳孔が大きく広がった。一方で、性的指向とは関係のない個人差のばらつきも目に見えるほどあった。
対象: さまざまな性的指向の男女325人(暗めの実験室・視線計測器を使用) / 限界: 著者自身が、映像の明るさやコントラストを完全にはそろえられなかったと述べている。
Pronkら(2021年)[4]
239人の異性愛者が、架空のプロフィールを見て「会う/会わない」を選ぶオンラインデート課題を行った。瞳孔が大きく広がった相手ほど「会う」を選びやすいという関連が確認された。この関連は、交際中かどうかや性別で変わらなかった。
対象: 異性愛者239人 / 限界: 写真を見て選ぶ課題で、実際に会って話す場面ではない。瞳孔が広がった理由が好意なのか、単なる関心や迷いなのかまでは区別できない。
Kretら(2015年)[5]
画面上の仮想の相手と、お金を預けるかどうかを決める信頼ゲームを行った。参加者は瞳孔が広がっていく相手を信頼し、縮んでいく相手には預けにくかった。参加者自身の瞳孔も、相手の瞳孔の変化に合わせて変化していた。
対象: 仮想の相手との信頼ゲームの参加者 / 限界: 恋愛ではなく信頼の実験。瞳孔の同調が信頼と結びついていたのは、自分と同じ集団の相手の場合だった。
Prochazkovaら(2022年)[6]
実験室の外の「お見合い」の場で、2人に視線計測メガネと心拍・皮膚の電気反応を測る機器をつけて会話してもらった。笑顔・笑い声・視線といった目に見えるサインは、相手への好意と有意な関連がなかった。好意を予測したのは、2人の心拍や皮膚反応が同期していることだった。
対象: 初対面の男女ペア / 限界: 短い初対面の会話を対象にしており、長く付き合う関係にそのまま当てはまるとは限らない。
もう一つ押さえておきたいのは、変化の大きさです。先のレビューでは、心理学の実験で使われる程度の刺激による瞳孔の広がりは、明るさや見る距離による大きな変化と比べて小さいと説明されています。新しい刺激に向けた瞳孔の広がりは、0.5〜1秒ほどでピークを迎えてすぐ消えるとされます[2]。会話中にこれを肉眼で見分けるのは、現実的ではありません。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
瞳孔は「読めないしぐさ」の側に入ります。好意を確かめたいときは、肉眼で測れない体の反応より、時間をかけて確かめられる行動を見るほうが確実です。
瞳孔ではなく、行動の積み重ねを見る
連絡を返してくれるか、次の約束に前向きか、話を覚えていてくれるか。肉眼で測れない瞳孔より、確かめられる行動を手がかりにする。
所要 3分
「明るさ」と「緊張」を先に疑う
相手の瞳が大きく見えたら、まず照明の暗さや、相手が緊張・集中していないかを考える。どれも瞳孔を広げる理由になる。
所要 1分
自分の「読み」を一度書き出す
「瞳が大きかったから脈あり」と感じたら、その根拠を書き出し、行動の根拠がいくつあるかを数えてみる。期待だけの読みに気づきやすくなる。
所要 5分
04距離の取り方と相談先
相手の体のサインを読もうとするほど、期待や不安が膨らみやすくなります。一人で抱え込まず、行動を手がかりにして、必要なら第三者に話してみてください。
- 「瞳が大きい=好き」と決めつけない。暗い店内や緊張する場面では誰でも瞳孔は広がる
- 読める手がかりは、連絡・約束・会話の中身など、くり返し確かめられる行動
- 相手の反応が気になって眠れない・仕事が手につかない状態が続くなら、信頼できる友人や、自治体の精神保健福祉センターなどの相談窓口に話す
- 好意のサインを「確かめるため」に相手を観察し続けることは、相手の負担にもなりうる
05よくある質問
瞳孔と好意について、よくある疑問に研究の範囲でお答えします。
好きな人を見ると、本当に瞳孔は開くのですか?
実験室の研究では、関心や興奮を感じる対象を見たときに瞳孔が広がる傾向が繰り返し確認されています。ただし変化は小さく、明るさや考えごとでも同じように広がるため、好意だけの反応とは言えません。
相手の瞳孔が大きければ、脈ありと考えていいですか?
おすすめできません。瞳孔は部屋の暗さ、見ている距離、緊張や集中でも大きくなります。研究は専用の機器で明るさをそろえて測っており、日常の会話で肉眼から好意を読み取れることは示されていません。
瞳孔が大きい人は魅力的に見えるのですか?
瞳孔が広がっていく相手をより信頼しやすいという実験結果はあります。ただし画面上の仮想の相手を使った研究で、恋愛の魅力にそのまま当てはまるとは限りません。
出典
- Hess, E. H., & Polt, J. M. (1960). Pupil Size as Related to Interest Value of Visual Stimuli. Science, 132(3423), 349-350. https://doi.org/10.1126/science.132.3423.349
- Mathôt, S. (2018). Pupillometry: Psychology, Physiology, and Function. Journal of Cognition, 1(1), 16. https://doi.org/10.5334/joc.18
- Rieger, G., & Savin-Williams, R. C. (2012). The eyes have it: sex and sexual orientation differences in pupil dilation patterns. PLoS ONE, 7(8), e40256. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0040256
- Pronk, T. M., Bogaers, R., Verheijen, M. S., & Sleegers, W. W. A. (2021). Pupil size predicts partner choices in online dating. Social Cognition, 39(6), 773-786. https://doi.org/10.1521/soco.2021.39.6.773
- Kret, M. E., Fischer, A. H., & De Dreu, C. K. W. (2015). Pupil Mimicry Correlates With Trust in In-Group Partners With Dilating Pupils. Psychological Science, 26(9), 1401-1410. https://doi.org/10.1177/0956797615588306
- Prochazkova, E., Sjak-Shie, E., Behrens, F., Lindh, D., & Kret, M. E. (2022). Physiological synchrony is associated with attraction in a blind date setting. Nature Human Behaviour, 6(2), 269-278. https://doi.org/10.1038/s41562-021-01197-3