お金の使い方を隠す『経済的不誠実』は、危険な相手のサインか

交際相手や夫婦のどちらかが、お金の使い方や借金を黙って隠していた。そうと知って、相手を信頼していいのか分からなくなった人は少なくありません。「これくらいで騒ぐのは大げさだろうか」「これは危険な相手のサインなのだろうか」と、一人で判断に迷うこともあるはずです。お金に関する秘密には、ちょっとした後ろめたさから、相手の生活そのものを支配しようとする経済的DVまで幅があります。研究から、その違いを見分ける手がかりを整理します。
3行でわかる
- 全米の既婚者946人を対象にした2022年の調査で、52%が配偶者にお金の使い方や借金を隠す「経済的不誠実」を経験しており、それは不倫と同時に起きやすいこともわかった。
- 借金を人に知られる気まずさを恐れる人ほど一人で抱え込みがちで、それがかえって借金を増やす悪循環につながることが研究で示されている。
- お金を隠すことと、相手の収入や支出を一方的に管理・制限する「経済的DV」は別物。研究では後者を独立した暴力の一形態として位置づけている。
01何が起きているのか
お金の使い方を黙って隠されると、信頼していいのか分からなくなるのは自然な反応です。隠し方の程度によって意味合いは大きく異なります。
研究では、配偶者やパートナーにお金の使い道や借金を隠す行動は「経済的不誠実(financial infidelity)」と呼ばれます。口座やクレジットカードの存在を隠す、買い物の金額を実際より少なく伝える、といった行動が含まれます。
こうした行動は、後ろめたさから出る一度きりの隠し事であることもあれば、相手の生活そのものを管理しようとする、より深刻なパターンの一部であることもあります。まずはこの二つを分けて考えることが、不安と向き合う最初の一歩になります。
02研究でわかっていること
経済的不誠実は不倫と同時に起きやすく、借金を隠す心理には「知られる気まずさ」への恐れが関係している。
Dew, Saxey, & Mettmann(2022)[1]
全米の既婚者946人を対象にした調査で、52%が配偶者にお金の使い方や借金を隠す「経済的不誠実」を経験していた。他の異性に言い寄る「フラーティング」をしている人ほど、経済的不誠実と不倫の両方が起きやすいという関連も確認された。
対象: アメリカの既婚者946人(世論調査会社YouGovによる全国代表サンプル)/ 限界: 一時点の調査のため因果関係は特定できず、自己申告・本人単位のデータである点に注意が必要。
Moorhouse, Goode, Cotte, & Widney(2023)[2]
借金を人に知られる気まずさ(スティグマ)を強く恐れる人ほど借金を隠し、助けを求めるまでに1年以上遅れる傾向があった。人前で出費を取り繕う行動も確認され、隠すことがかえって借金を増やす悪循環が明らかになった。
対象: 6つの調査、延べ1,000人超の消費者/ 限界: 交際相手に限定した調査ではなく、友人や職場も含めた「借金を隠す」行動全般を対象にしている。
Postmus, Hoge, Breckenridge, Sharp-Jeffs, & Chung(2020)[3]
6大陸にわたる46本の研究をレビューし、相手の収入や口座を一方的に管理・制限する「経済的DV(経済的虐待)」を、身体的・性的暴力と並ぶ独立した暴力の一形態として位置づけた。見えにくいために見過ごされやすい点が指摘されている。
対象: 世界各地で発表された46本の査読論文のレビュー/ 限界: 経済的DVの定義や測定方法が研究ごとに異なり、国際的に統一されていない点が課題として指摘されている。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
一度お金を隠されたことと、収入や支出を一方的に管理・制限されることは別物。パターンを分けて見ることが大切です。
「隠す」と「支配する」を分けて考える
一度の後ろめたさからの隠し事なのか、収入を見せない・自由に使わせない・家計を一切知らせないといった継続的な管理・制限のパターンなのかを振り返る。
所要 5分
自分名義の口座と信用情報を確認する
自分名義の口座を持っているか、CICやJICCなど指定信用情報機関に自分の情報を開示請求できることを知っておくと、知らない借金に気づきやすくなる。
所要 30分
責めずに、今後のルールを話す機会を持つ
「なぜ隠したのか」を問い詰めるのではなく、「今後は金額や口座の状況を共有したい」と、これからのルールを具体的に話し合う。
所要 1回の対話
04距離の取り方と相談先
収入を見せない、外で働かせないなど支配につながる経済的DVの疑いがあれば、一人で抱えずに専門の窓口に相談してください。
- 家計の状況を一切共有しない、生活費を渡さない、外で働くことを妨害するといった状態が続く場合は、経済的DVの可能性を考える。
- 身の安全や生活に関わる深刻な状況では、DV相談ナビ(局番なしの#8008、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる)に相談できる。
- 借金や契約など法律面の問題は、法テラス(0570-078374)で無料の法律相談を受けられる場合がある。
- 危険を感じる場合は、警察相談専用電話(#9110)も利用できる。
05よくある質問
お金の使い方を隠されたら、それだけで別れたほうがいいのでしょうか?
いいえ。研究では経済的不誠実を経験した人は少なくないことが示されています。一度の事実だけで判断せず、話し合いに応じるか、その後の行動がどう変わるかを見ていくことが大切です。
パートナーの口座や明細を勝手に見てもいいのでしょうか?
本人の同意なく口座情報を調べることは、関係によってはかえって信頼を損なう原因にもなります。まずは直接話し合う機会を持ち、それが難しい、または支配や危険を感じる場合は専門の窓口に相談することをおすすめします。
経済的不誠実と経済的DVは何が違うのですか?
経済的不誠実は主にお金の使い道を隠すことを指すのに対し、経済的DVは収入や支出を一方的に管理・制限し、相手の自由を奪う継続的な支配を指すとされています。研究では後者を独立した暴力の一形態として扱っています。
出典
- Dew, J. P., Saxey, M. T., & Mettmann, A. (2022). Money lies and extramarital ties: Predicting separate and joint occurrences of financial deception and extramarital infidelity. Frontiers in Psychology, 13, 1038169. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9722948/
- Moorhouse, M., Goode, M., Cotte, J., & Widney, J. (2023). Helping those that hide: Anticipated stigmatization drives concealment and a destructive cycle of debt. Journal of Marketing Research, 60(6), 1135–1153. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13038143/
- Postmus, J. L., Hoge, G. L., Breckenridge, J., Sharp-Jeffs, N., & Chung, D. (2020). Economic abuse as an invisible form of domestic violence: A multicountry review. Trauma, Violence, & Abuse, 21(2), 261–283. https://doi.org/10.1177/1524838018764160
