まばたきが増えるのは緊張や嘘のサインか。まばたきの研究でわかったこと

話している相手が、急にパチパチとまばたきを繰り返す。「緊張しているのかな」「何か隠しているのかな」と気になったことはありませんか。結論から言うと、まばたきは緊張や不安と関係することがありますが、それ以上に「話している」「集中している」といった場面で大きく変わります。嘘の実験では、嘘をついている間のまばたきはむしろ減っていました。まばたきの回数から嘘を読み取ることはできません。
3行でわかる
- 成人のまばたきは会話中が最も多く、1分あたり10.5〜32.5回が目安。読書中は1.4〜14.4回に減る。回数は場面で大きく変わる。
- 映像に集中するとまばたきは1分24.2回から16.6回に減った。不安が強い人ほど映像視聴中のまばたきが多い傾向も報告されている。
- 嘘の実験では、嘘をつく間のまばたきは減り、話し終えた後に増えた。人が嘘を見抜ける正解率は平均54%で、まばたきは嘘の証拠にならない。
01何が起きているのか(悩みの正体)
まばたきは、目を守るだけでなく、注意や気持ちの状態によって回数やタイミングが変わる動きです。そのため「心の動きが出るサイン」として注目されやすいのです。
まばたきの多くは、意識しないまま起きる自発的なものです。何かをじっと見ているときは減り、ひと区切りついたところで出やすいことがわかっています。つまり、まばたきには目や頭の「使い方」が表れます。
「まばたきが増えるのは嘘をついている証拠」という話をよく見かけます。けれども、まばたきは話す、聞く、読む、見るといった活動の違いだけで何倍にも変わります。緊張や不安との関係も報告されていますが、それは数ある要因の一つにすぎません。研究で確かめられていることと、俗説を分けて見ていきます。
02研究でわかっていること
まばたきは会話中に増え、集中すると減ります。不安との関係も一部で見られますが、嘘の実験では嘘をつく間にむしろ減っていました。
Doughty(2001年)[1]
まばたきの回数を調べた過去75年分の研究を整理し、成人の目安を場面ごとに示した。読書中は1分あたり1.4〜14.4回、黙って前を見ているときは8.0〜21.0回、会話中は10.5〜32.5回。会話中が最も多く、読書中が最も少ない。
対象: 既存研究の整理と若い成人の測定 / 限界: 測定法や条件で値が変わるため、著者自身が「一つの数値で言うのは適切でない」と述べている。
Nakano ほか(2009年)[2]
14人に短い映像(コメディ)を見てもらうと、まばたきは安静時の1分あたり24.2回から、視聴中は16.6回に減った。さらに、動作が終わったときや主人公が画面にいないときなど、注意をあまり必要としない瞬間に、見ている人どうしでまばたきのタイミングがそろった。
対象: 成人14人 / 限界: 映像を見る課題での結果。会話中の相手のまばたきを読む研究ではない。
Tomashin ほか(2025年)[3]
女子学生50人のまばたきを脳波の記録から測った。安静時には、まばたきの回数とその時点の不安の強さに有意な関係は見られなかった。一方、感情を動かす映像を見ている間は、不安が強い人ほどまばたきが多い傾向があった(相関 0.418)。
対象: 健康な女子学生50人 / 限界: 相関研究で、性別も限られる。まばたきの回数だけで個人の不安を判定できるわけではない。
Leal・Vrij(2008年)[4]
26人(嘘をつく役13人、本当のことを話す役13人)の面接を録画して比べた。嘘をつく人は、嘘を話している間はまばたきが普段より減り、話し終えた直後に増えた。本当のことを話す人は、話している間にまばたきが増え、その後の変化はなかった。
対象: 26人 / 限界: 少人数の実験室研究。嘘をつく負担で「我慢して減る」可能性を示したもので、日常の会話で嘘を見抜く方法として確かめられたものではない。
Bond・DePaulo(2006年)[5]
206の文献、のべ24,483人の判定者を統合したメタ分析(多くの研究をまとめて分析する方法)で、特別な道具や訓練なしに嘘と本当を見分けられた正解率は平均54%だった。見た目だけで判断するより、声を聞けるときの方が正確だった。
対象: 206文献・24,483人の判定者 / 限界: まばたきだけを調べた研究ではなく、しぐさ全般を含む「見抜く力」全体の結果。
03見抜くサインと、身を守る小さな一歩
まばたきから読めるのは「今、注意や気持ちの状態が変わったかもしれない」までです。嘘・好意・本音の中身は読めないので、言葉と行動で確かめます。
- 読めること: 何かに集中しているときは減り、区切りで増えやすい。不安が強いときに多くなる傾向もある
- 読めないこと: 嘘をついているか、自分に好意があるか、何を隠しているか
- 注意点: 会話中は1分に30回前後になることもあり、多く見えても珍しくない。疲れでも回数は変わる
「その人の普段」と比べる
まばたきが多い人も少ない人もいる。回数そのものより、同じ人の普段と比べて変わったかに注目する。
所要 1分
場面の違いを差し引く
話している最中は増え、何かをじっと見ているときは減る。まばたきの変化は、まず「今している活動」の違いで説明できないかを考える。
所要 2分
「緊張させているかも」と受け止める
話題によって増えたように見えたら、嘘を疑うより、ペースを落とす、質問を一度やめるなど、相手が話しやすい場をつくる。
所要 2分
本音は言葉と行動で確かめる
気になることがあれば、まばたきから推測を重ねず、落ち着いたときに率直に聞く。約束を守るかなど、行動の積み重ねで判断する。
所要 5分
04距離の取り方と相談先
まばたき一つで相手を疑ったり、自分の目の動きを気にしすぎたりする必要はありません。不安が強く続くときは、専門の窓口に相談できます。
- 相手のまばたきは「緊張や集中の変化かもしれない」の目安にとどめ、嘘や好意の証拠として扱わない
- 相手を問い詰める材料にしない。まばたきを根拠に嘘を責めると、本当のことを言っている人を傷つけるおそれがある
- 人前での強い緊張や、気持ちの落ち込みが長く続いてつらいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や心療内科・カウンセリングに相談する。目の違和感が続くときは眼科へ
05よくある質問
まばたきのしぐさについて、よくある疑問にお答えします。
相手のまばたきが増えたら、嘘をついているということですか?
そうとは言えません。嘘をつく場面を調べた実験では、嘘をついている間のまばたきはむしろ減り、話し終えた後に増えていました。本当のことを話した人は話している間に増えていました。まばたきの回数だけで嘘を見分けることはできません。
会話中のまばたきは、1分間に何回くらいが普通ですか?
研究をまとめた報告では、成人の会話中のまばたきは1分あたり約10.5〜32.5回が目安とされています。黙って前を見ているときより多く、読書中は少なくなります。人や場面による幅が大きいので、回数そのものより「その人の普段」と比べることが大切です。
自分のまばたきが多いのは、緊張しているせいですか?
緊張が関係している可能性はあります。映像を見る実験では、その時点の不安が強い人ほどまばたきが多い傾向がありました。ただし、まばたきは話す・集中する・疲れるなど多くの要因で変わります。目の違和感が続くときは眼科で相談してください。
出典
- Doughty, M. J. (2001). Consideration of three types of spontaneous eyeblink activity in normal humans: during reading and video display terminal use, in primary gaze, and while in conversation. Optometry and Vision Science, 78(10), 712-725. https://doi.org/10.1097/00006324-200110000-00011
- Nakano, T., Yamamoto, Y., Kitajo, K., Takahashi, T., & Kitazawa, S. (2009). Synchronization of spontaneous eyeblinks while viewing video stories. Proceedings of the Royal Society B, 276, 3635-3644. https://doi.org/10.1098/rspb.2009.0828
- Tomashin, A., Fusina, F., Marino, M., & Angrilli, A. (2025). The eye, a spy hole on human mind: Spontaneous blink rate and amplitude, and their variability, as new psychobiological markers of anxiety. PLoS ONE, 20, e0338262. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0338262
- Leal, S., & Vrij, A. (2008). Blinking during and after lying. Journal of Nonverbal Behavior, 32(4), 187-194. https://doi.org/10.1007/s10919-008-0051-0
- Bond, C. F., Jr., & DePaulo, B. M. (2006). Accuracy of deception judgments. Personality and Social Psychology Review, 10(3), 214-234. https://doi.org/10.1207/s15327957pspr1003_2