「追いかけると、逃げる」を繰り返すのはなぜ?愛着スタイルと恋愛の相性の研究
好きなのに、なぜかいつも同じところですれ違ってしまう。不安になると連絡せずにいられない自分と、距離を置かれるとつい追いかけたくなる自分。逆に、相手が近づいてくるほど息苦しくなり、つい会話を切り上げてしまう自分。こうした「いつものパターン」は、性格の相性が悪いからではなく、対人関係の土台になっている「愛着スタイル」の組み合わせで説明できると、研究では報告されています。
3行でわかる
- 恋愛関係のすれ違いの一部は、「不安型」「回避型」といった愛着スタイルの組み合わせで説明できると研究では報告されています。
- 不安型と回避型が組み合わさると、「追いかける・離れる」のパターンが強まりやすいことが、カップルを対象にした研究で確認されています。
- 愛着スタイルは固定されたものではなく、経験によって変わりうることもレビュー研究で示されています。自分の傾向を知ることが、すれ違いを減らす手がかりになります。
01なぜ、いつも同じすれ違いになるのか(悩みの正体)
「追いかけると逃げられる」「近づかれると息苦しい」という繰り返しのパターンは、性格の不一致ではなく、それぞれが持つ「愛着スタイル」の組み合わせで説明できると研究では考えられています。
愛着スタイルとは、もともとは乳幼児と養育者との結びつきを説明するために生まれた考え方で、その後、大人の恋愛関係にもあてはめて研究されるようになりました。研究では大きく「不安」と「回避」という2つの傾向の強さで整理されることが多く、不安の傾向が強い人は、見捨てられることへの恐れや、相手からの反応を繰り返し確かめたくなる気持ちが強くなりやすいとされます。一方、回避の傾向が強い人は、相手と近づきすぎることに居心地の悪さを感じ、自分の気持ちや弱さを見せることを避けやすいとされています。
この2つの傾向が、パートナー同士でどう組み合わさるかによって、関係の中で繰り返されるパターンが変わってきます。たとえば、不安の傾向が強い側が「もっと近づきたい」と反応を求め、回避の傾向が強い側がそれに対して距離を取ろうとすると、不安な側はさらに不安になって追いかけ、回避する側はさらに距離を取る、という悪循環が生まれやすくなります。2025年に発表された、第一子を迎える98組のカップルを追跡した研究では、男性の回避傾向が強いほど、パートナーである女性の不安傾向の強さによって、男性が感情的に圧倒される度合いが変わることが確認されており、こうした組み合わせの影響が実際のデータでも示されています。
02研究でわかっていること
愛着スタイルの不安傾向・回避傾向は関係の満足度と結びつくことが複数の研究で確認されており、特に不安型と回避型の組み合わせでは「追いかける・逃げる」のパターンが強まりやすいと報告されています。
Hadden・Smith・Webster(2014年)[1]
愛着の不安・回避の傾向が強いほど関係満足度が低くなるという関連は、関係が長く続くカップルほど強く現れる傾向があると、複数の先行研究をまとめたメタ分析で報告された。愛着の傾向による影響は、時間が経てば自然に薄れていくものではないことを示している。
対象/性質: 恋愛関係にある成人を対象にした先行研究をまとめたメタ分析 / 限界: 多くが横断的な調査で、同一カップルを長期間追跡したものではない。
Bretaña・Alonso-Arbiol・Recio・Molero(2022年)[2]
回避の傾向が強い人ほど、対立が起きたときに話し合いから引く「撤退」の対応を取りやすく、それが自分自身の関係満足度の低下と結びついていた。さらに、一方が撤退し、もう一方が強く要求・非難するという組み合わせのパターンは、双方の満足度の低下と関連していた。
対象/性質: 異性愛カップル175組(350人、18〜72歳)への調査 / 限界: ある対立場面を振り返って回答してもらう横断調査で、因果関係を示すものではない。
Morgan・Woodin(2025年)[3]
第一子を迎える98組のカップルを妊娠後期から4年間追跡した調査で、男性の回避傾向が強い場合、パートナーである女性の不安傾向が強いときのほうが、男性が感情的に圧倒される度合いが大きかった(回帰係数0.241、女性の不安が低い場合は0.098)。不安型と回避型が組み合わさることで、要求と撤退のパターンが強まりやすいことを裏づけている。
対象/性質: 第一子を迎える夫婦98組を対象にした4年間の追跡調査 / 限界: 妊娠・出産期に限定した調査で、すべてのカップルに当てはまるとは限らない。
Ho・Rahaman(2026年)[4]
2014〜2024年に発表された査読論文40本をまとめたレビューで、愛着の傾向は人生を通じて人間関係の質に影響し続ける一方、固定された性格特性というより、経験によって変わりうる仕組みとして理解すべきだと報告された。
対象/性質: 査読論文40本を対象にしたシステマティックレビュー / 限界: レビューに含まれる個々の研究の質にはばらつきがある。
03自分と相手の「型」に気づく、小さな一歩
愛着スタイルは診断ではなく傾向です。自分がどちらに寄りやすいかに気づくことが、繰り返すすれ違いのパターンを変える最初の一歩になります。
不安になったときの自分の行動を振り返る
連絡の頻度を増やす、既読を何度も確認する、相手の反応を過剰に気にするなど、不安型に近い反応が出ていないか振り返ってみる。
所要 5分
距離を置きたくなる瞬間に気づく
相手が近づいてきたときに、話を切り上げたくなる、一人になりたくなるなど、回避型に近い反応が出ていないか気づいてみる。
所要 5分
「追いかけ・離れ」のパターンに名前をつける
すれ違いが起きたときに、自分がどちらの役割になりやすいかをパートナーと言葉にしてみる。相手を責めるためではなく、繰り返すパターンを理解するために行う。
所要 15分
反応する前に一呼吸おく
不安や息苦しさを感じた瞬間にすぐ連絡したり、その場を離れたりする前に、少し時間を置いてから行動してみる。
所要 数分
04続けるためのコツ
愛着スタイルは変えられないものではなく、安心できる関係の積み重ねの中で変化しうることが研究では示されています。焦らず、小さな安心を重ねることを意識してください。
- 一度気づいたパターンも、繰り返し出てくるのが普通です。「またやってしまった」と自分を責めすぎないようにする。
- パートナーの行動を「愛情がない証拠」と決めつける前に、それがその人の愛着スタイルの反応かもしれないと一呼吸置いて考えてみる。
- 安心できるやり取りが積み重なることで、愛着の傾向は徐々に変化しうると研究では報告されています。短期間での変化を求めすぎない。
- パターンが深刻で、自分たちだけでは変えにくいと感じる場合は、カップルカウンセリングなど専門家のサポートを利用するのも一つの方法です。
05この研究から考えた、こんなアプリ
すれ違いが起きた瞬間の自分の反応を記録し、「追いかけ型」「距離型」どちらに寄りやすいかに気づけるアプリ
APP IDEA
ふたりの温度計(仮)
Before: 不安になって追いかける・気まずくて離れるを繰り返してしまう自分 → After: 自分と相手のパターンに気づき、一呼吸おいて行動を選べる自分
- すれ違いが起きたあとに「不安が強くなった」「距離を置きたくなった」など、自分の反応をワンタップで記録
- 記録を振り返り、自分が「追いかけ型」「距離型」どちらに寄りやすいかの傾向をグラフで確認できる
- 強い反応が出た瞬間に、一呼吸おくための短いガイド(深呼吸・気持ちの書き出しなど)を表示
- パートナーと一緒に使うモードで、お互いのパターンを言葉にするための会話のきっかけを提案
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06よくある質問
ここでは、読者からよく寄せられる疑問に、確認できた研究の範囲でお答えします。
愛着スタイルは自分でテストして診断できますか?
学術研究では質問紙を使って測定しますが、これは研究用の尺度であり、医学的な診断ではありません。自分の傾向を知るための参考として捉え、断定的なラベル付けは避けることをおすすめします。
不安型と回避型は相性が悪いということですか?
研究では、この組み合わせが「追いかける・離れる」のパターンを強めやすいことが報告されていますが、それだけで関係がうまくいかないと決まるわけではありません。パターンに気づき、行動を変えることで関係の質を保てるとする研究もあります。
愛着スタイルは一生変わらないのですか?
いいえ。研究では、愛着は固定された特性というより、経験によって変わりうる仕組みとして理解されるべきだと報告されています。安心できる関係の積み重ねが、変化のきっかけになるとされています。
パートナーの愛着スタイルを、自分が「治して」あげることはできますか?
研究が示しているのは、安心できる関係の中で変化が起こりうるということであり、一方が他方を「治す」というものではありません。それぞれが自分の傾向に気づき、対話を重ねることが土台になります。
出典
- Hadden, B. W., Smith, C. V., & Webster, G. D. (2014). Relationship Duration Moderates Associations Between Attachment and Relationship Quality: Meta-Analytic Support for the Temporal Adult Romantic Attachment Model. Personality and Social Psychology Review, 18(1), 42-58. https://doi.org/10.1177/1088868313501885
- Bretaña, I., Alonso-Arbiol, I., Recio, P., & Molero, F. (2022). Avoidant Attachment, Withdrawal-Aggression Conflict Pattern, and Relationship Satisfaction: A Mediational Dyadic Model. Frontiers in Psychology, 12, 794942. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8841843/
- Morgan, S. D., & Woodin, E. M. (2025). Perceptions of Conflict at the Transition to Parenthood: Exploring Adult Attachment Pairings as Predictors of Emotional Flooding. Family Process, 64(3), e70057. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12310420/
- Ho, J., & Rahaman, M. A. (2026). The Influence of Attachment and Relational Quality on Developmental Outcomes Across the Lifespan: A Systematic Review. Frontiers in Psychology, 17, 1745013. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13046531/